声の出ない生活を送っていると、今まではわからなかった、見えていなかったものが見えてきた。


 まずは、電話に全く出られないというのが、いかに不便かということ。


 子供の緊急連絡網も回せなければ、幼稚園への電話連絡も出来ない。元々電話応対が苦手な主人は、こういった事のいっさいを私に任せていた。私は電話も苦ではなかったし、初対面の人と話す事も平気だった。


「俺が電話するしかないんだよね・・・・・・」


 主人は、渋々と私の代わりに電話をかけてくれた。

 声が出ないだけで、自分一人で出来る事が随分減った。


 主人は私が一人で外出する事を心配したが、私は目も見えるし、耳も聞こえるから、メモ帳があれば大丈夫!といつも笑っていた。


 

 次女がの幼稚園からもどり二人きりだった時に、次女の足の指の皮がぺろりと剥けて真っ赤になっているのに気が付いた。

朝はこんなじゃなかったはずなのに、幼稚園から戻った次女が靴下を脱ぐと真っ赤になった痛々しい足があった。


 これは・・・・、病院へ連れて行かないと・・・・。


 だけど、こういう場合は何科に連れて行けばいい?整形外科?皮膚科?

 私はこの土地に引っ越してきてから、その類の病院へかかったことがなかったので、慌てて町のお医者さんを探した。


 一番近いのは、整形外科だった。

 自転車で行ける範囲だし、ここにとりあえず連れて行こう。ただ、今日やっているかわからない。もし休診だったら、別の病院を探さなくてはならない。


 迷った末、私は受話器を持ちあげ整形外科の電話番号を押した。


ピ、ピ、ピ、ピ・・・・・・・・

プルルルル、プルルルル・・・・・・


 コールが鳴りだした。休診なら留守番電話になるはず。やっていれば誰か出るだろう。


「はい、○○整形外科です、・・・・・・・・もしもし?」


 心の底から申し訳ないと思いながら電話を切った。

ごめんなさい!!悪戯じゃないんです。

声が出ない事をもどかしく思った。


 次女を自転車に乗せ、病院へ向かう。


メモに、


『子供の脚の指の皮が剥けて真っ赤になっています、初めてです。お願いします』


と、書き、保険証と一緒に受付に渡した。


「お母さん、耳は聞こえますか?」


 話せないと耳が聞こえないは、セットで考えられる事が多い様で、私はよくこの質問をされた。

 その度に私は頷き、相手の目を見た。


 次女は化膿止めの軟膏を処方してもらい、私はほっとして家路を帰った。

 今回は何とかなったが、もしまた何かあったら、私で対応しきれるのか不安だった。


 残念ながら次女の不運は続き、この後もっと大変な事になる。





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