古いレコードを整理していたら
君が好きなレコードがでてきた
僕はそれを聞くことが怖くて
随分と据え置いた
夏が来て
あって無いような秋が過ぎ
全てが縮こまる夜を越えて
また春が来た
生き物たちが人生の讃歌を唄っているところ
僕も遅れまじと急いで起き上がるが
その頃にはもう、夏の緑が燃え盛っていた
だから君の好きなレコードを
誰もいない、まっ昼間の田園の、ど真ん中でかけてみた
人間の耳はすごい
蝉の声は不思議と聞こえなくなった
僕もこんな場所でこんな曲を聴くとは思わなんだが
でもまあ、とどのつまり
救いとは
本人以外には分かりづらく
それでいて他者を温めるものなのか
救いなんて本当にあるのか
でも太陽がひつこく、ひつこく、
この、ちじこまった背中を焦らしてくる
暑いだろう?じゃあ前へ前へと進めと
またいつかこのレコードを聴こうか
そのころにはこの膝に、新しい生命が乗っかっているのかもしれない
そしてこの古いレコードはずっと回り続けているのだろう
そうそれは
お前はお前でいいんだよと
奏でている