大学卒業後、普通に社会人デビューをして


彼女がいないどころか今ひとつぱっとせず


いけてない男ぶりを醸し出していた建築研修生のたぶた。




ファッションには興味を持たず、稼いだお金はほとんどCDと本に費やしていた。


親と同居。食事にも困らない。


お昼はいつもの店で450円のうどんセット。


手取りで言えば月の収入は13万円。


まぁ。設計事務所下働きといえば大体そんなモノだ。


毎日終電かそのまま会社で一泊。目の下にはツキノワグマ。


当然モテルはずもない。


というより、モテようと努力する気さえ無くしていた。




・・・・・




それでも、彼女が欲しいという希望はあった。


当時一番の友人は同じ建築学科を卒業して


一部上場企業に就職していたN。


Nは背が高くておしゃれで話も饒舌だった。


一方ワタシは背は低く猫背でいつも同じ服ばかり着ていた。


Nは新卒で年収500万円弱。


ワタシは250万円そこそこ。


クレジットカードの加入さえままならない。


そんなNは、常時複数人の彼女をもてあそんでいた。




キープ?本命?セフレ?


意味わかんねー。


でも、彼と一緒にいるとなんか女の子が寄ってくると


勝手な妄想でバーチャルモテ男をワタシは楽しんではいた。




そんな彼女いない歴○年のワタシを哀れに思ったのか


彼は当時流行っていた「ねるとんパーティ」によく誘ってくれた。




「ねるとんパーティ」


とんねるずの「ねるとん紅鯨団」という当時の人気番組に倣って


複数人の男女がフリータイムを経て


最後は男が女を指名し告白するシステム。





女の子はたいていサクラだとわかっていても


彼女が欲しい一心でその虚構の時間を楽しみにしていた。





そして3度目か4度目のねるとんパーティにて


世界が戦慄する事件は起こったのだった。

























(つづく)