雨漏りと言うのは建築に携わる者にとって誰もが一度は経験し、


また一番恐れているものであります。

施主として、設計者として、現場代理人として、


それぞれの立場でワタシも雨漏りを経験してきました。

今日は雨漏りを題材に、その三者の人間模様を追いかけてみましょう。



とある中学校の屋上防水全面改修工事での出来事。


工期は夏休中に完成ということになっています。

防水全面改修工事というのは、現場の古い防水層を全て撤去し、


新しい防水層を設置する工事。


防水層とは簡単に言えば雨や水を通さない薄い膜のコトです。


今回は既存がアスファルト防水の上押さえモルタル。


その上に事後の改修で砂付きアスファルト露出工法がされてありました。


押さえモルタルの精度が悪く勾配も緩いため、現状雨漏りが数カ所ありました。


今回工事で既存防水層を全て撤去し、新たに勾配を取り直してトーチ工法で


防水層を形成する改修工事(1500㎡)です。


(こんなの建築関係者にしか通じませんよね(ーー;)




当然、一度今まであった防水層を剥がす訳ですから、


その時たまたま雨が降れば建物の中に水がしみて、


いわゆる雨漏りが発生します。


それはどうしても避けなければいけません。


まず施主(この場合学校の先生)はこう考えます。


「雨降るみたいやけど、大丈夫かなぁ。漏らさんといてや。」


そこで、もし雨が降ったらどうなるのかを現場所長に尋ねるわけです。


「雨が降ったら、どうなりますか?」


現場所長は当然天気予報を事前に確認しています。


この先1週間の天気はだいたい把握してるもので


解体時期は雨が降らないことを知っています。


というかそれを見越して工程を組んでいます。



しかしながら、天気というものはわからないので


万一雨が降っても大丈夫なように、最上階(この場合4階)の


備品や什器にはあらかじめ施主の了解を得てビニールで養生してありました。


さらに、湿度に弱い楽器等はあらかじめ別棟に移動してもらっていました。


「そうですね。あのビニールが役立つことにならないよう祈っていますよ。」


そう、現場所長は雨が降らないよう祈るばかりです。


大雨が来ればたぶん間違いなく漏るんですから。


もう一度地方気象台に週間天気予報を確認します。


「うーん。土日は30パーセント。曇りか。微妙だな。」



予算と工期に余裕があれば、仮屋根と言って解体部分をすっぽりと被せる


仮設の屋根を架けることがあります。


しかし、この時期台風の心配もあり中途半端な仮設は避けたいし


大規模なものはとてもこの現場で採用できません。


設計監理担当の建築士に一応問い合わせてみます。


「たぶん大丈夫だと思うんですが、雨が降ったら大変ですし


シート養生を考えています。」



シート養生とは、防水層を剥がした部分に一時的にビニールシート等で


覆い被せ、雨をしのぐ方法です。


建築士は、新築の設計なら、雨漏りをしない策を練りますが


こういった既存の改修で、現状をそのまま復旧するような場合


建築士としては設計として考える余地がないので、現場任せになります。


「漏らさないようにお願いします。」


なんて単純なんでしょう(笑)




現場との信頼関係が作業をリードするのです。


施工側も経験とプライドがあるわけですから


「どうすればいいでしょうかねぇ。」


とは訊かないんですよね。。。



そして、天気については施工会社の責任において工事は進んでいくわけです。


運を天に任せるとはまさにこのことを言うのでしょう。


(続く・・)