訳あって、インターネットで「人気のある建築家」を調べることになったが


時には意外な名前も目にすることがある。


白井晟一(シライセイイチ)氏もその一人だ。


一昔前の建築家で、年配の建築家仲間では崇拝者も多いのだが


若い人にも結構人気があると言うことを知り驚く。


私にとっては氏は謎の建築家の一人である。


白井晟一 1905年生-1983年11月没


元々寡作であり、現存する建築も少ないことから孤高の建築家と称される。


さらに現存する作品・残された図面からその作風は独自性があり異端とさえ言われる。


またその風貌も相まって手塚治虫のブラックジャックのモデルとも言われる。


彼の紹介ではよく、高い精神性とか哲学的とか言われるのだが


外観写真を見る限り「えっ?これが?」というようなごく普通の建築も多い。(特に北日本に)


一方、東京や佐世保に残された有名な「都心の墓標」ノアビルや「女性の美脚をかたどった」カイショウ館


など、写真で見る限り「なんじゃこりゃ!」というびっくり建築もある。


そういうわけで、私は氏のことを「変わった建築家」と思っていたが、決して「好きな建築家」ではなかった。


しかし、若い世代にも支持を受けている事実から最近気になる建築家の一人になっている。


建物は意匠にこだわるあまり、居住性や機能性にはかなりの欠点があると聞くが


それでいて、後世に名を残すのだからそれはそれですごいことかなと思うのである。


(しかしながらこれが真実なら私の大嫌いな建築家(アーティスト)ということになるが)


私は建築の世界にいながら勉強不足ながらこの建築家の作品をまだ生で見たことがない。


もしかしたら人生において私はかなりの損をしているのかも知れない。


その作品の非有用性と得意な景観がアカデミズムに反するところから


氏の建築は次々と解体撤去される危機に瀕しているようだ。


そして日本では大概、壊されつつある建築にこそ価値があるものだ。


見るなら今しかないのである。


偏った知識で彼とその業績を判断するのではなくここは是非自分の目で確かめたい。


楽しみがまたひとつ増えた。