何故それは私に起きたのか ~意味の心理学~ | ☆

   

A;これから、あなたの腕にこの【針】を刺しますね。

B;キャッ、変質者❢ 誰か助けてーっ❢❢ (恐怖に青褪め、逃げ出す)

 

ところが、

A;このお注射を打てば、お熱もきっと下がりますからね。ちょっとチクっとしますが、頑張ってくださいね。

B;元気になるためには「必要な事」なのね。じゃあ、お注射は好きじゃないけど、頼むわね(痛いのはイヤに決まってるが、自ら腕を差し出す)。

 

上記は、V.フランクル(名著『夜と霧』で知られていますね)の考え方のエッセンスを、私なりに意訳し、寸劇化(?)したものです。www

 

 

人間って、「嬉しくない」ことでも、「私の人生に、どうしても必要な事だったんだ」とその事態の持つ「意味」が納得出来ると、それに自ら立ち向かうことができるのですね。

 

 

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H子ちゃんは、高校2年生になる春に我が学園に転校してきました。

 

転校してきて暫くは、暗く沈み込んでいて、いつも「うつむき加減」、すべてにおいて意欲を失っていました。

 

転校前のH子ちゃんの在籍校は地元で有名な「高偏差値」校で、H子ちゃんはその学校の中でもかなり優秀な成績を修めていたとのことでした(母親・談)

 

転校に至った原因は、「勉学」についていけなくなったというのではなく、そこの「教師の考え方」についていけなくなってしまった事でした。

 

「お前たち、こんな成績では、『将来』が見えてるな。今の成績のままだったら、バカ大学以外への進学は諦めておけ・・・あ、H子は別な」

「人間、やっぱり『能力』だ。能力のないダメ人間など、いらん❢」

 

H子ちゃんは、幼稚園の頃から、不思議とお年寄りたちとの出逢いに恵まれてきました。

それは、小学校、中学校に入ってからも同じで、そんな「お友達」と触れ合い、なにかとお手伝いをさせていただき、自分もご老人たちからいろいろお世話をしていただき、こうしてお互い自然な形で補い合い助け合えることが、楽しくて仕方ありませんでした。

 

「勿論、娘の将来は娘に自由に選んでほしいですが、親の目からすると、H子には『介護・福祉』の分野が向いているのではないかと・・・」(母親・談)

 

それはH子ちゃん自身の希望でもありました。

前籍校へ入学した当初は、

「私、この高校で一生懸命に勉強して、福祉の学べる大学へ進学して、介護福祉士の資格を取って、将来は、お年寄りの介護ができる仕事に就きたい・・・」

それこそ「意気揚々」としていたそうです。

 

ところが、徐々に、登校することがつらくなってきて、しまいには「学校」の事を考えただけで、体調不良に見舞われるようにさえなってしまったのです。

 

そうした中での、H子ちゃんの転校でした。

 

ですが、転校後も暫くはH子ちゃん、全く元気が出ずに、たびたび「カウンセリング・ルーム」へ「避難」しにやってきたものでした。

 

「先生、ごめんなさい。私、ここへ転校したことで、『ああ、自分は”堕ちてしまった”子なんだ。”落伍者”なんだ』って思います」

 

あはは。そりゃ、我が学園は、「偏差値」や「進学率」など全く関心の外、学園責任者の私からして「国からあてがわれた『教科学習』なんて、どれほどのものよ? それよりも、皆には、人として、優しくあたたかな心でこれからも誠実に生きていってほしいな」ですから、世間から見れば、勉強のできない子たちが通う〔偏差値のつけようがないダメ学校〕なんでしょうね、きっと(爆笑)

 

ところが、そんなH子ちゃん、ある日、晴れやかな顔をして「カウンセリングルーム」へやって来たのです。

 

「先生、分かりました❢ なんで、私、前の学校からアブレたのかが」

「学校から弾かれてアブレてしまったのではなくて、先生のよくおっしゃる私の『潜在意識』が私に『軌道修正』を仕掛けてきたんだなあって❢」

「おい、H子。このままでいいのか? このままだと、お前の『夢』や『願い』が錆びついてしまうぞ、堕落してしまうぞって・・・」

「私の志している介護は、お年寄りたちと対等に関わることでしか成り立ちません」

「そんな介護職を志す私の心が、『人間、成績だ、能力だ』という考えに染め上げられていたら、目の前のお年寄りのことを、『この人は、一人じゃ何もできない、能力のない、劣ったダメな人なんだ』と無意識でとらえてしまい、それでは、どこか上からの介護になってしまうと思うんです」

「そんな人の行う介護なんて偽物で、介護されるお年寄りにとっては屈辱でしかないと思うんです。そんな関わりから幸せが育つハズありません」

「この間、先生から『福祉』という語は、『福』の字も『祉』の字も、両方とも『幸せ』を意味する文字だ、と教わりました」

「私、本物の関わりを通して、本物の幸せを育てる、本物の介護士になりたい❢」

「本物の介護士なるために、この『転校』は絶対に必要だったのですね❢」

「私、堕ちたから転校したんじゃなくて、飛躍・上昇するために、私の潜在意識の導きで軌道修正をしたんだと分かっちゃったんです❢」

 

H子ちゃん、(そりゃ、真面目で、学校の成績も良い、世間の言ういわゆる「優等生」だったのですが、そんな学校的発想などでなく)本当の意味で、人として立派な「優等生」でした❢

 

今は、介護施設で「主任」として活き活きと、日々、心を尽くしています。

 

めでたし❢

 

人間はやっぱり、「意味」が分かることで、事態に立ち向かう「希望」と「勇気」を手にするものなのですね。