最近話題のナトリウムイオンバッテリーに手を出してみました。
メーカーは中国のOUTDOで製品名はNaCRX14 Pro。日本では2025年7月にMakuakeから先行予約での販売開始がされて以降,今年に入って2りんかんなどの店頭取り扱いも開始されています。
開封した図。
OUTDOナトリウムイオンバッテリーは,BMW Motorrad WorldSBK Teamが公式採用しており,外箱にはMロゴなども印字されています。
NaCRX14 Proの主な特徴(小生が冬季使用中のGSユアサ YTX14-BSと比較しつつ)
- ナトリウムイオン採用の新世代バッテリー
鉛でもリチウムでもない ナトリウムイオン電池を採用。既存の YTX14-BSなどと完全互換。 - 軽量
重量がYTX14-BSの半分程度の軽さ。ただし,リチウムイオンバッテリーよりも2倍程度重く,軽い順に並べると,リチウムイオン1kg程度<ナトリウムイオン2kg程度<鉛4.5kg程度。 - 圧倒的な低温始動性能
−25℃でもエンジン一発始動できる強力な低温性能。CCA(−18℃で安定して出力できる電流)は270アンペアあり,YTX14-BSの約200アンペアよりも1.35倍ほど高め。CCAが高いとセルが力強く回り,劣化しても始動性能が落ちにくく大排気量向き。 - 高い静止電圧
イグニッションオン時の静止電圧が約14Vあり,内部抵抗が低いため始動時の電圧降下も少なめ。YTX14-BSは12V~13Vかつ電圧降下の幅が大きめ。 - 長期放置に強い
フル充電保管で最長18か月放置可。車両装着時は約12か月放置可。YTX14-BSはもって数ヶ月。 - 多重保護による高い安全性
過電流・異常加熱を検知すると自動遮断。液漏れゼロ。360°どの角度でも設置可能。発火リスクが小さい構造。 - 長寿命
仮に0Vまで放電しても再充電で復活し,約80,000回のエンジン始動に対応。YTX14-BSは0Vになると廃棄一択かつ最大で5,000回程度。 - 高速充電対応(最大3C)
過放電耐性が非常に強く,バッテリーが0V付近でも3C(バッテリー業界で常用される指標。理論上,20分で満充電になる)の大電流を3分流すことでエンジンをかけられるだけのエネルギー量が回復。
黄金色の端子はしっかりとした剛性。
端子にナットをセットするには,ナットを保持するためのゴムスリーブと組み合わせます。小生としてはYTX14‑BSのようにボルトを回すとナットが押し上げられて固定される仕組みの方がしっくりきます。
ゴムスリーブにより適度な抵抗感がでるため脱落防止になりますが,経年劣化が気になります。
なお,バッテリー交換にあたっては,より冬場の始動性を高めるべく,R1250GS系特有の弱点(2019年発売以降,BMWモトラッドが公には認めない既知の事実)である電圧降下が起きやすいケーブルの強化を行いました。
強化箇所は,次の3区間。
- バッテリーとスターターリレー間のプラスケーブル約50cm
(純正の撤去が手間かつ配線スペースに余裕が無いうえ,大電流を流す最初の区間は並列の共締めを避けたいため,純正は絶縁処理して新設) - スターターリレーとセルモーター間のプラスケーブル約35cm
(純正の撤去が容易なので交換) - セルモーターとバッテリー間のマイナスケーブル約40cm
(純正の撤去が手間なので並列で新設して二重配線化)
強化に用いたケーブルはオーディオテクニカ製TPC4で,主にカーオーディオの電源ラインとして使われる高品質ケーブルのため,大電流を扱う配線に適しています。
TPC4の主な特徴
- OFC(無酸素銅)導体を使用
電線の世界では高品質導体の代表格で,導電性が高く,電圧降下を抑えるのに最適。 - 4AWG(22sq相当)の極太ケーブル
大電流を流せる電源ケーブルとして定番。許容電流は 115アンペア(連続)になり,GSのエンジン始動時はそれを優に超えますが,TPC4は瞬間的な許容ピーク電流が600アンペア(メーカーでは非明示,自己責任)程度まで安全圏と推測できるため十分過ぎるほどに余裕。 - TINコート処理
同線の表面に錫(TIN)を薄くメッキ処理しており,酸化に強く耐腐食性(耐湿気,耐振動,耐温度変化)が高くてオートバイ向き。 - 多芯ツイスト構造
0.12mm × 1,666本の細線を束ねた柔らかい構造で,太いケーブルながら取り回しがしやすい。 - 耐熱PVCシース素材
106℃まで対応しており,高温環境でも安心して使える耐熱仕様。
取り外したスターターリレーとセルモーター間の純正ケーブルをTPC4と比較した図。純正は廃棄するため,興味本位に切断して導体(電流の通り道)の太さを確認したところ,8AWGが使用されていました。4AWGのTPC4では導体の断面積が8AWGよりも2.5倍ほど大きいため,抵抗が半分以下になり電圧降下量の大幅低下が期待できます。
純正は細い(確信)。あと,TINコートはされておらずストランド数(電流が流れる芯)が少ないうえ被膜も硬いです。TPC4の方が太いものの柔軟性に優れています。
海外フォーラムでも苦言を呈していたライダーが多数見られましたが,そもそも純正バッテリーEXIDE LTX14の低い性能(ただし値段は高い)やバッテリーからセルモーターに至るまでのケーブルが細く,抵抗が高いことで電圧降下が起きやすいこと,そして新エンジン(2019発売当時)であるShiftCamの高圧縮かつデコンプ負荷によるクランキング時(セルモーターによるクランクシャフトの回転)の必要エネルギーが増したことなどが重なり,負の連鎖から始動性悪化の症状が如実に表れていたようです。ただ,車両の個体差(バルブクリアランス調整度合い)により症状の大小があり,酷いケースもあれば特段気にならないケースがあるとか(小生は幸いにして後者寄り)。
DIY配線作業の流れ。
左のサイドケースを外すとスターターリレーが設置されており,ここにバッテリーからのプラスケーブルとリレーからセルモーターへ接続するプラスケーブルがそれぞれナット締めされています。図は作業完了後の状態。
スターターリレーが大きいのは,過去のトラブル(小型のリレーが溶着してセルモーターが回りっぱなしになる現象)を踏まえて耐高電流・耐アーク性(劣化しにくさ)を高めているようです。
バッテリーのプラス端子とスターターリレーを繋ぐため,燃料タンクを外してバッテリーケースの上面に配線用の穴を開けて汎用グロメットも装着した図(ドラレコ,フォグライト,ナビ,レーダー探知機やバッテリー充電用のケーブル類が全てタンク下を通過しておりカオスな状態)
スターターリレーからのプラスケーブルを右サイドまで這わせ,ワイヤーカッターで被膜をカット。被膜と導体の境界ギリギリまで刃が届くよう微調整するのが地味に難しい。
4AWG用ターミナル端子(オーディオテクニカ製TL4-M6R)を圧着。金メッキ処理で厚みもありしっかりしています。TPC4は高級感溢れるケーブルですが,断腸の思いでキジマ製セルフラップスリーブで覆って保護。
そしてセルモーターへ接続(矢印の部分)。初見殺しのプラスチック保護カバーがあり,この外し方を把握するのに10分以上要しました。固定しているノッチが二か所あり,外観から視認できる箇所と,全く見えない下側にそれぞれ設けられています。
セルモーターとバッテリ間のマイナスケーブルも同じように処理。ただし,純正ケーブルは撤去が面倒で残置したため二重配線に。純正と共締めにより接点(抵抗)が増えるささいなデメリットはあるものの,電圧降下を抑制するメリットの方が遥かに大きいため早々に妥協。
セルモーターからバッテリーのマイナス端子まで最短ルートで接続。プラスと同様に映えるケーブルですが,カウル外で露出する範囲はスリーブで覆って保護。
配線作業の完了後,気温0℃の環境下でエンジン始動を試みたところ,セルボタンを押した瞬間に感じる力強さが明らかに向上しており,YTX14-BSでは顕著だった電圧降下によるタイムラグ(セルボタンを押して一呼吸置いてからセルモーターが回る現象)も完全に解消され,クランキングが始まるまでの時間が大幅に短縮されて「即」始動できるようになりました。正直なところ,暖かい時期に性能を発揮するリチウムイオンバッテリー(NOCO NLP14,小生は冬季の始動性に落胆して保管中)と同等以上の感覚。
基本的に散財しては後悔を繰り返すモーターサイクルライフを送っているのですが,今回は久々に満足度の高い結果となりました。
おまけで,バッテリー充電器も新調してOPTIMATE1 DUO+(高速充電とは無縁の低電流かつ鉛とリチウムイオン兼用モデル)をゲット。ナトリウムイオンバッテリーは鉛やリチウムイオン用の充電器をそのまま転用可能とされており,専用充電器(そもそも現時点で販売なし)が不要という謳い文句になっています。














