到着と迷走
JALの直行便は定刻より1時間も早くシャルル・ド・ゴール空港に降り立ったが、第二ターミナルの端という現実が、長い通路を歩かせる。掲げられた標識は「出口」と「バゲージクレーム」のみ。「入国」の二文字を探して係員に尋ねれば、もっと先へ、階下へ、そして列車に乗れと告げられる。このままどこへ連れていかれるのかという微かな戸惑い。

拍子抜けする入国審査
ターミナル間の連絡列車を降りた先にある入国審査場は、中東やアフリカ便の波が去った後だったのか、驚くほど空いていた。無駄に長い動線を蛇行させられた挙句、パスポートの読み取り機にかける。前を歩く男たちの機械は赤く灯り、次々と係員のカウンターへ送られていく。壊れているのではないかと思ったその機械は、私の番になるとあっさりと緑の光を返し、私はパリへと通された。

北駅への道と宿
冷房のないRERの車両は、富良野線を思わせるのろまな足取りで30分以上かけて北駅へと運んだ。今日から身を寄せる「Grand Hotel de Paris」は東駅の目の前にある。1階のビストロの奥、英語を解すマダムが鍵をくれた。部屋は狭く、息を潜めるように最小限のものしかない。レビューに騒がれていた南京虫の影を警戒し、持参のスプレーをベッドに噴きつけて目を凝らすが、今のところ気配はない。

駅裏の風景
どの街であれ、駅の周辺には特有の澱(おり)のような空気が溜まる。チェックインの後に歩いた東駅の周囲も例外ではなく、年輪を重ねたような、あるいはそれ以上にすり減った小さな宿が軒を並べていた。前回の訪問から35年という歳月を経て私が立っているのは、華やかなパリの表玄関ではなく、その裏側の、少し乾いたコンクリートの上だった。