師走に入り、気が付いたら今年もあと一か月足らずとなってしまいました。月日の経つのは早いものですねおーっ!。今回は、独立前のアメリカ東海岸・マサッチューセッツ植民地のセイラムという町で実際に起こった魔女裁判を基にして書かれ、現在はアメリカの高校生の必読書にもなっている群集心理の暴走の危うさをテーマにしたアーサー・ミラーの戯曲『The Crucible (邦題:るつぼ)』を紹介したいと思います。

The Crucible (邦題:るつぼ)

 

ストーリーは、17世紀末のアメリカ・マサッチューセッツ植民地にあるセイラムという小さな町が舞台。ここの住民は聖書を絶対視し、神との契約を守る共同体で成り立っている、当時としてはキリスト教原理主義的な思想を持ったピューリタン達だった。ある日、町で力のあるパリス牧師の娘・ベティーと彼女の従姉妹・アビゲイル・ウィリアムズが、黒人奴隷・ティテュバが開いた降霊会に参加した事を牧師に咎められ、原因不明の体調不良を訴えた事から事件が起こる。医者が診察しても治らず、村の有力者が二人は悪魔に取り憑かれていると言い出すと、悪魔を呼んだ魔女は誰なのだと町中は大騒ぎに。アビゲイルとベティーはティテュバを始め複数の人間を魔女だと告発し、魔女だと言われた人々は次々と捕らえられ裁判に掛けられていく。ところが、町の人々に信頼されている老女が魔女だと告発された辺りから、一連の騒ぎは本当に魔女の仕業なのかと疑いを持つ町人も出てきて・・・。

 

という感じです。キリスト教原理主義的なピューリタンの戒律や聖職者や一部の有力者が絶対的権力を持つ閉塞感漂う町で、彼らに逆らう行動をすると命さえも奪われたり、逆に主人公のアビゲイルの様に彼らを利用して物事を自分に都合の良い方へ運ぼうとする者も現れたり、町の人々もその状況を当然と捉え、異を唱える事を認めなかったりという群集心理の危うさや、罪を認めた(この場合は魔女ではないのに魔女と言えば)者が無罪になり、認めなかった(魔女ではないので魔女と言わなければ)者は逆に有罪になるという人間の判断の矛盾が的確に描かれている秀作です。背景には1950年代にアメリカで起こった赤狩りとマッカーシズムに対する批判があるようですが、この様な事は国や時代を問わず、どのような場所でも団体になればあり得ますので、一人一人が自分の頭で考えていく事が大切だと教えてくれる本作は、学校等で読ませるのに適した一冊だと言えますグッド!

戯曲なので、小説とは違った読みにくさがありますが、慣れてしまえば逆にサラっと読む事が出来るので、隙間時間用にピッタリです。余談ですが、作者のアーサー・ミラーはあのマリリン・モンロー香水の夫でもありました。

 

英語は、17世紀のアメリカ・マサッチューセッツ植民地が舞台なので、古めかしく、お世辞にも読み易いとは言えませんが、こちらも慣れればストーリーの巧みさに惹かれて(続きが気になって)いつの間にか読み切っているビックリマークなんて事になるかもしれません(笑)。

 

映画版もあり、狡猾な少女・アビゲイルを若き日のウィノナ・ライダーが演じているのですが、これが彼女のイメージにドンピシャおーっ!でウィノナの才能が如何なく発揮されており、ウィノナ・ファンは勿論、そうでない方も必見の一本です。戯曲という事で、原作の台詞をほぼそのまま映画に使えるので、こちらを見てもらった方が作品のイメージが掴みやすいと思います。

クルーシブル [DVD]

クルーシブル (字幕版)

Crucible (輸入盤ブルーレイ)

 

邦訳も出ています。

アーサー・ミラー〈2〉るつぼ (ハヤカワ演劇文庫 15)