今日はサラトガという古い町のダウンタウンにあるカフェでジャムセッションのハウスバンドをやってきました。普段は毎月第3日曜日しかやらないのですが、今日の進行役担当であるドラマーのサットン・マーリーに頼まれたので引き受けました。サットンはまだ19歳の若者ですが、とても音楽的でセンスのあるプレイをします。去年からジャズの名門ノーステキサス大学(UNT)に入って修行中。UNTの音楽学部はライル・メイズやマーク・ジョンソンを輩出していることでも有名です。

今日はさらにピアノがグレゴリー・チェンという、こちらも名門のマンハッタン音楽院(MSM)で学んでいるピアニストだったので楽しみにしてました。彼も去年地元ベイエリアの高校を卒業したばかりの1年生です。MSMはフィル・ウッズやロン・カーター、ハリー・コニックJr.など超一流アーティストを多数輩出している有名校。ハービー・ハンコックが短期ながら学んでいたこともあるそうです。少数精鋭で学生の数は少ないそうなのですが、ベイエリアのジャズコミュニティからここ最近この学校に行っている、あるいは行っていた若いミュージシャンが他にも何人かいます。

僕がこうやってニューヨーク帰りの学生やミュージシャンと演奏する時はやっぱり意識が少し違います。ジャズの最前線で彼らが吸収して来たサウンドに僕自身がどこまで通用するか、というのを試す機会だからです。僕のイメージでは、典型的なニューヨークのスタイルというのはアドリブの幅広い選択肢をロジカルにかつアグレッシブに攻め、リズムも前に前にドライブする感じ。全体的なテンポ感もカリフォルニアのジャズよりもBPMでいうと5くらい速い気がする。だから今日もそういう意識で、ジャストで合わせるよりも少し前に行く感じでやったらばっちりハマりました。内容的にも、まあ年の功もあるし(彼ら二人の年齢を足して僕と同じくらいになる)、格好はついたかなと思います。いつも頭の中でイメージしているサウンドが大体間違っていないということも確認できたので良かった。ちなみに僕はアメリカだとかなり若く見られるので、彼らみたいな若者も気軽に付き合ってくれるのはちょっとうれしい(10歳くらい若く見られます)。

グレッグとは彼がNYに発つ前、去年の夏にジャズフェスのジャムセッションで一緒に演奏して以来でしたが、1年でやはり成長して引き出しが多くなっていました。さらに今日は偶然、ニューヨーク大学(NYU)で音楽をやっているというテナーサックスのプレイヤーが飛び入りし、かなりハイレベルなNYサウンドのジャズが展開される瞬間があってさらに楽しかったです。彼は今週だけ、おじいさんを訪ねて来てるだけだとのこと。サラトガみたいなのんびりした町のジャムセッションでこんなサウンドを体験することになって彼もびっくりしていると言ってました。

夏休みはこういう感じで、ベイエリア地元出身でいながら東海岸やテキサスで修行している学生が実家に帰ってくるので、色々と楽しみがあります。また今年の夏、彼らと演奏できる機会があるといいな。5月末のメモリアル・デーを過ぎるといよいよアメリカは夏本番です。