大藪春彦  『野獣死すべし』 | 読書ジャンキーの本棚

大藪春彦  『野獣死すべし』

大薮 春彦
野獣死すべし

大藪春彦の作品には、『蘇る金狼』『汚れた英雄』『傭兵たちの挽歌』など、著名な作品が多々ある。
しかし、デビュー作の『野獣死すべし』を越える作品は、遂に出なかった。
それほどに、『野獣死すべし』のインパクトは強い。


それは、ひとえに著者自身のバックポーンが、全て、この作品と、主人公の伊達邦彦の中に、投影されているからだと思う。
『野獣死すべし』は、著者の自伝的要素も含んだフィクションなのだ。


この小説の主人公、伊達邦彦を始め、大藪作品のヒーローたちは、いずれも、単独で行動する一匹狼である。


彼らは、自由の手足を縛ろうとする社会の秩序や法律を嘲笑う。

管理された社会に飼い慣らされることを、徹底的に拒否する。
そのために、常に、社会の支配層と戦い続けねばならない。


どの作品の主人公にも、頼りになるのは、己自身以外にはないという深い自覚がある。
外見の優雅で繊細なポーズと、内面のふてぶてしいまでの図太さ。
闘争時はもちろん、享楽に耽っている時でさえ、己自身に課したスタイルからは外れることのないストイシズム。


どの作品もワンパターンだと酷評する向きもあるけれど、大藪春彦は、一度はまってしまうと、中毒になってしまう劇薬である。

未読の方は、一度お召しになってはいかが?


それにしても伊達邦彦は、カッコよすぎるぞ。

その十分の一でも、お裾分けしてくれたらな~と思ってしまう。


切れ味: 良


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