第二章~転校生~


休み明けの朝はやはり眠い。どうにか学校に着いたものの、眠気が完全になくなった訳ではない。多少の眠気は付き物である。
「あら~?もしかして寝不足??」
頭と教室に響く真帆の声。

辺りの視線が一気にこちらに向けられる。

「朝から耳にタコ作らせる気か?おまえは・・・。」
「そんなつもりはないけど・・・。」
「じゃぁいいから俺を寝かせてくれ。」
「もう授業始まるよ?」
「いいんだよ。とにかく―」
次の言葉を言いかけた時だった。
ガララッ
「はーい。おはよー。」
『おはようございます。』
あのメガネ教師は今日もテンションが高い。名は「森岡浩美」。二年前に転勤してきた女教師だ。中学、高校でバレーボールをやっていたらしく、身長は教師の中でも特に高い。
「作文かいてきた~?」
生徒達の口から声が漏れる。
「そっか~。じゃぁ・・・十五分!」
この言葉によって全員にスイッチが入り、ペンを走らせる。


「あと三分~。」
わざとらしいカウントダウン。


「ハイ、終了ね~。」
場の空気が一瞬で歪む。
「つかれた~」「なんか暇だったわ」等の言葉が教室内を飛び交う。
「みんな前向いて~。」
来た。
この言葉が来ると必ず何か重要な連絡が言い渡される。
「ちょっと、入ってきなさい。」
カラカラカラ・・・
入ってきたのは茶色い髪を長く垂らした小柄な女子。
「ん?あれって・・・。」
似ている。昨日見た女子に。
「ホラ、自己紹介、自己紹介。」
森岡はなんでも強要する。恥ずかしさや戸惑いからか、転校生の頬が染まる。
「えっと、私、宇都宮第一高校から転校してきました、長谷川百合香といいます。よろしくお願いしますっ。」
深々と頭を下げる転校生。
「じゃぁ、あそこがあなたの席だから。行ってらっしゃい。」
森岡が差したのは俺の隣だった。
照れくさそうに席に着く長谷川。
「あの、、、あなたのお名前は?」
「・・・倉本康亮。」
「ありがとうございます。じゃぁ、、、康亮君って呼んでもいいかな?」
「・・・。」
なんだか胸が熱い。
「倉本ー。鼻の下伸びてるぞー。」
迷惑な茶化し。でもないのか?
{なんだこの気持ち・・・}
キーン コーン カーン コーン・・・
「ほーらっ。授業始めるぞー。」
その時だった。
前方からの強い視線。
真帆だった。
「じぃ~~~~~・・・。」
授業中だというのにお構いなしだ。
「真帆~。真帆~。」
先生に呼ばれているというのに、全く気付かない。
「真帆っ!!」
「はいぃ?!」
真帆の声が裏返る。
「何ボーっとしてんの。さっさと答えなさいよ。」
「えっと・・・あの・・・わ、わかりません。」
「じゃぁ、、、ホラ、早く座って。」
おずおずと席に着く真帆。しかも一人で頬を膨らませている。
ふと見ると、隣で百合香がクスクス笑っている。
「何考えてんだあいつ・・・。」
俺はその時、真帆にいつもと違う雰囲気を感じた。




続。