より、抜粋してお届けします。
※チェックしてないので誤字脱字かなり多いです←あったら教えて下さい(笑)
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肥満
体脂肪が異常に多く蓄積された状態が肥満です。糖尿病、脂質異常症、高血圧、胆石症などの生活習慣病につながるばかりでなく、がんのリスクも高めることが分かってきました。
栄養医学の治療では、肥満の原因を分析し、血液データを基に、食事、運動、栄養治療と生活の改善を行いながら、エネルギーの代謝を向上させてゆくことが基本です。
脂肪細胞の数は、思春期を過ぎて身体の成長が止まるとそれ以上は増えなくなり、減量しても脂肪細胞の数は減りません。しかし、脂肪細胞に脂肪がたまりその体積が170%以上にふくらむと、脂肪細胞の数が増加し始め、さらに肥満が進みます。
身体に蓄えられる脂肪には皮下脂肪と内臓脂肪があります。皮下脂肪は皮膚のすぐ下に蓄えられる脂肪です。皮下脂肪は女性に多く、ヒップや大腿部につきやすく下半身肥満(洋梨型肥満)を起こしやすいです。
一方、内蔵脂肪は肝臓や腸などの臓器の周りに蓄えられる脂肪(腹腔内脂肪)です。男性に多くみられ、ヒップよりウエストの方が大きい上半身肥満(リンゴ型肥満)を引き起こします。生活習慣病につながる危険が大きい肥満です。
内臓脂肪型肥満(=上半身肥満、リンゴ型肥満)は、糖尿病、脂質異常症、高血圧、脂肪肝といった生活習慣病を合併することが知られています。たとえ現在そのような病気を発症していなくても、肥満の状態が続けば将来に発病する危険性が高いと考えなければなりません。
>肥満と合併症
糖尿病
インスリンが多く分泌されると肥満になりやすく、肥満はインスリン抵抗性の原因となるなど、糖尿病と肥満は不快関係があります。(「糖尿病」の項を参照)
脂質異常症
肥満は中性脂肪が増えている状態でもあります。中性脂肪が増えると、HDLコレステロールが減りLDLコレステロールが増え、脂質異常症になるリスクが高まります。(「脂質異常症」の項を参照)
脂肪肝
余分な脂肪酸やブドウ糖が、中性脂肪として肝臓に貯蔵されることが脂肪肝の原因になります。
ホルモンバランス異常
肥満によりホルモン分泌に変調をきたし、無月経や第二次性徴が始まらない、前立腺が肥大するなどの症状が起こることがあります。
がん
過体重と肥満が、がんのリスクを高めることが疫学調査で知られています。
老化
肥満の人は、そうでない人に比べて「命の回数券」と呼ばれる、染色体の末端にあるテロメアの長さが短くなりがちです。つまり老化が速く進むことがわかってきました。LDLコレステロールなどにより身体が酸化しても、テロメアは短くなります。
肥満による合併症は、次の図のような順序で起こります。
-メタボリックシンドローム-
脂質異常症、糖尿病、高血圧はインスリン抵抗性が複雑にからみあって複数の危険因子となり、動脈硬化や冠動脈疾患を発症させます。これをメタボリックシンドロームと呼んでいます。
どれか一つを発症すると他を合併しやすく、それぞれの症状は軽度であっても、多く合併するほど動脈硬化を促進し、心筋梗塞や脳卒中などの心血管病変(虚血性心疾患)や脳梗塞のリスクを高めます。どれか1つ症状があると心血管病変を併発するリスクが5倍、2つ持つ人は10倍、3つとも揃うとなんと35倍に上昇してしまうといわれます。
さrない怖いことには、これらの病気は「サイレントキラー」とも呼ばれ、症状が目に見えない形で進行するのです。治療を受けずに放置するうちに重大な病気を引き起こしてしまう可能性が高く、「気づいたときには手遅れ」ということも少なくありません。
*日本メタボリックシンドロームの診断機銃んは以下の通りです。
内蔵型肥満(ウエスト周囲経が男85cm・女90cm以上)に加えて以下のうち2項目以上に当てはまる場合がメタボリックシンドロームと診断されます。
- 血中脂質(中性脂肪が150mg/dl以上、HDL コレステロール値が40mg/dl未満のいずれか、または両方)
- 血圧(収縮期血管が130mmHg以上、拡張期血圧が85mmHg以上のいずれか、または両方)
- 血糖値(空腹時血糖値が100mg/dl以上)
<原因>
摂取カロリーが消費カロリーを上回る
私たちが食事から摂取したカロリーは、エネルギーとして消費されますが、消費しきれないものは、身体の中で脂肪(体脂肪)として蓄えられてゆきます。肥満は、摂取カロリーが消費カロリーを上回ることが原因で起こります。基礎代謝(注1)は、35歳をすぎると急速に低下し、それまでと同じ食事を摂っても、身体が消費できるカロリーは少なくなります。
注1
快適な環境のもとで肉体的・精神的に安静状態で、食後12~15時間後に消費されるエネルギー量のこと。
<発症のメカニズム>
食欲中枢の不調率が深く関与
食べすぎて、摂取した余分なカロリーを蓄積するために、体内の脂肪細胞に貯める脂肪の量が増え、それぞれの脂肪細胞が太り、肥満の状態になります。脂肪の貯蓄量が増え、脂肪細胞の大きさが170%を越えると、脂肪細胞の数も増えはじめ、肥満はさらに進みます。脂肪細胞に溜め込まれた脂肪の量は減らすことはできても、いったん増えた脂肪細胞の数は減ることはありません。また、食べ過ぎ以外にも下記のような因子が重なり合うことで、さらに肥満は加速しやすくなります。
>インスリン抵抗性と肥満の関連性
- 肥満者は脂肪細胞に含まれる中性脂肪の量も増えて、そこからインスリンの作用を阻害する(TNF-αなど)を多く分泌しているといわれています。
- 肥満になると脂肪により細胞自体が大きく膨らみ、インスリン感受性が鈍くなり、インスリンレセプターの数も減ります。
- 過食により血糖が増えすぎてインスリンの量が相対的に足りなくなります。また肥満者には体質的に血糖の量に応じてインスリンの分泌量を増やせない人が多いようです。
- 糖尿病患者では血液中のGTF(注2)が低下しているため、インスリンが過剰に分泌されやすいと考えられています。
※インスリン抵抗性について、詳しくは「糖尿病」の項を参照。
注2
ブドウ糖耐糖能因子。クロム、ナイアシン、グルタミン酸などで作られる。
インスリン過剰分泌
血糖値を下げるホルモンであるインスリンは、「太らせるホルモン」とも呼ばれます。ブドウ糖を中性脂肪として脂肪組織に貯蔵すると同時に、脂肪の分解を抑制するため、インスリンの過剰分泌は内蔵(肝臓など)や皮下に脂肪を貯め肥満の原因となります。
満腹中枢と摂食中枢の機能が不調律
脳の視床下部には、食欲を調整する作用があり、なんらかの原因で調節がうまくいかなくなると、過食が起こり肥満の原因となります。食欲中枢に関わる要素には次の項目があります。
>食欲中枢と肥満の関連性
1)低血糖状態により刺激
血糖上昇は満腹中枢を刺激し、低血糖状態は摂食中枢を刺激します。食後でも血糖値が下がると、また食欲がわいてきます。
2)ホルモン
ホルモンと食欲は深く関わっています。ノルアドレナリン、インスリン、ステロイドホルモン(副腎皮質ホルモン、性ホルモン)、甲状腺ホルモンは摂食を刺激し、グルカゴン、エストロゲンは反対に低下させます。セロトニンはノルアドレナリンの作用を抑え、過食を防止します。
3)胃の容量
胃壁にある副交感神経の受容器が胃の膨張度を感知してその信号を視床下部にある満腹中枢に伝えます。過食を抑える要素として、食事のボリューム感も関与します。例えば、胃の中で容量が増大する水溶性食物繊維を多く含む海藻などを摂ることで、満腹中枢が刺激され過食を防ぐことができます。
4)自律神経失調症
食欲中枢のある脳の視床下部には、自律神経の中枢があり、食欲は自立神経の影響を受けます。
5)ストレス
ストレスは自律神経に変調をもたらします
食欲を調整する生理活性物質の減少
γリノレン酸は食べたものを燃焼させるはたらきを促し、食欲をコントロールする作用があります。γリノレン酸の濃度が低下する要因として、加齢、女性の生理前後、飲酒、ストレス、細菌感染、発がん物質、栄養素の不足(亜鉛、マグネシウム、ビタミンB6、ビオチン、ビタミンC、ナイアシンなど)があり、過食の一因となります。
代謝の障害、酵素の活性度の低下
脂肪を燃焼させたり、貯蓄、分解する過程を調節したりする酵素の障害も肥満の原因となります。例えば、TCAサイクルでの酵素活性、脂肪酸をミトコンドリアに運ぶためのアシルカルニチンを生成するはたらき、脂肪酸を脂肪組織に運び、脂肪化するはたらきを活性化する酵素の調節機能などが関与します。
エネルギー消費の低下
基礎代謝の低下、運動不足、食事を消化吸収するためのエネルギー不足、褐色細胞(※3)から生成される熱量の低下などにより、エネルギー消費は低下します。
※3
食後、特に過食時に熱を産生することで食後のエネルギー消費を増大する機構があり、この熱の産生は褐色脂肪細胞で行われている。肥満者は食後の熱産生が普通の人より少ないことが知られている。
<診断>
いくつかの判定法を用いて診断
肥満化どうかを判定する基準はいくつかあります。メタボリックシンドロームの診断は、肥満の定義である「BMI25以上」と、内蔵脂肪蓄積の指標となる「ウエスト周囲長:団背い85cm以上、女性90cm以上」を基準としています。
・体格指数(BMI=Body Mass Index)
体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)=22…標準値
※18.5以上25未満は普通、25以上は肥満、35以上は高度肥満と判定します。
(例)身長170cm、体重80kgの人なら、80÷1.7÷1.7=27…肥満となります。
その他、体脂肪率(体重に占める脂肪の割合)やW/H比(ウエスト/ヒップ比)などが肥満の指標として用いられます。
<治療>
食事の見直しと運動が日本柱
【食事量と食事内容の見直し】
1)1日の総カロリー摂取量を小さくする
ゆっくりと、月に1kgの脂肪をへらすことを目標とします。脂肪組織1kgの燃焼に必要なエネルギーは7000kcalなので、いつもの食事から1日240kcal減らすと1ヶ月で1kgの脂肪が減る計算になります。毎食のご飯1杯(約140g)を軽く1杯(約100g)に変えた場合、3食で約200kcal減らすことができます。
2)栄養のバランスを考える
糖質:脂質:タンパク質
=5:2:3の割合で摂取
炭水化物は複合糖質(穀物)から摂ることをこころがけ、単純糖質(砂糖、はちみつなど)は控えます。糖質は余分に摂ると脂肪に変わり、体内に貯蔵されてしまいます。また、過剰な糖質摂取は脂肪の合成を促進するインスリンの分泌を刺激しやすいのです、ただし糖質が総摂取エネルギー量の40%以下になると脂質異化、タンパク質の異化が起こりやすくなり、身体の代謝を損ねます。熱量の比で「糖質:脂質:タンパク質=5:2:3」の比で摂るのが理想的です。
タンパク質は1日で
標準体重×1.14g以上を目安に
食事制限を始めると、タンパク質不足に陥りがちですが、基礎代謝を落とさずに健康的に減量するためには、タンパク質の摂取は必須です。ただし、動物性タンパク質は脂肪も同時に摂ることになり注意する必要があるため、プロテインパウダーの利用をお勧めします。
(例)標準体重60kgの場合
60×1.14=68.4g(1日分)
ビタミン、ミネラルを多く摂る
野菜をたくさん食べるようにします。1日350g以上は必要です。野菜は生よりも、兼ねるすると水分が減り多く食べることができます。
上記の方法のほかにも、アルコールを飲みすぎない、油脂の摂取を控える、食品のカロリーを覚える、などの方法も減量に有効です。
【運動による減量】
食事の制限や工夫による減量は可能ですが、身体を維持するための適切な栄養を摂り、かつ基礎代謝を高めるために、運動は不可欠です。肥満の状態ではエネルギー代謝をうまく行えず、カロリー消費量が少なくなりがちなため、カロリー消費量を多くする必要があります。食事制限による減量だけでは筋肉が落ち、糖代謝などの障害がさらに悪化し、脂肪は減らないという悪循環に陥ります。たるみやしわにならずに脂肪をへらすためにも、適切な運動が有用です。
>運動により得られる効果
1)脂肪を燃やす
貯蓄脂肪を減らすためには、脂肪を分解し生じた脂肪酸を二酸化炭素と水に燃焼する運動が必要です。運動により筋肉の酸素消費量は増え、心臓の鼓動は早くなり、血流がよくなります。このエネルギー源として脂肪が燃えます。特に脂質の異常代謝や脂質異常症、動脈硬化を招きやすい内臓脂肪は燃えやすく、筋肉のエネルギー源として消費されやすくなります。
2)血流が良くなる
適度な運動により、血液が固まりにくくなり、血栓の予防、動脈硬化、脳卒中などの予防になります。インスリンリセプターの数、および感受性が向上し、血糖値が安定します。
3)心肺機能の増進
運動により、自律神経(特に副交感神経)が強化されます。また、筋力や持久力の増進も期待できます。
肥満の栄養治療(1日の基準量)
※実際の必要量は、個人差、季節要因、症状によって異なります。
プロテイン …30g~
細胞内や血液中の脂肪はタンパク質と一緒に輸送されるので、タンパク質不足は脂肪燃焼を滞らせる。
ビタミンB群 …50mg~
脂肪燃焼に必須
ビタミンC …2000mg~
脂肪酸が細胞の中の”発電機”であるミトコンドリアに入るために必要。インスリン活性化作用もあり、インスリン過剰分泌を抑えるはたらきがある。
カルシウムとマグネシウム …Ca600mg~、Mg300mg~
代謝を円滑にし、エネルギー産生を促進する。Ca:Mg=2:1のバランスで摂る
メチオニン
肝臓の機能改善に効果があり、肝炎、脂肪肝を防ぐ
ヘム鉄
TCAサイクルを促進し、脂肪の代謝も促進する
ギムネマ
糖の吸収速度を低下させ、かつ吸収そのものを阻害するのでインスリンの過剰分泌を抑制し、肥満を防ぐ働きがある。糖制限がしにくい場合などに用いる。
レシチン(ホスファチジルコリンとして)
細胞の生体膜を保護し、栄養素の吸収を助け、脂肪燃焼に役立つ。脂肪肝がある場合に用いる。
食物繊維
胃内で膨張するため、満腹感を得られ、過食防止に役立つ。腸での脂肪やブドウ糖吸収を抑えるはたらきがある。
ビタミンE …270mg
月経異常など、ホルモン異常が見られる場合など
γリノレン酸 …400~800mg
他の方法では過食が改善しない場合に
亜鉛 …30mg~
過食の抑制にビタミンB6 とともに摂る