ながさきピース文化祭・オペラ《愛の妙薬》が終わりました。

当日は沢山のお客様をお迎えし、美しいスペインの田園風景のもとで繰り広げられる物語を味わっていただきました。

プログラムの「演出ノート」にも書きましたが、今回のコンセプトは「広場のオペラ」でした。

 

《愛の妙薬》は、スペインの片田舎の農村で、青年ネモリーノが、高嶺の花のアディーナに片思い、隊長ベルコーレというライバルの登場に焦った彼がインチキ薬売りのドゥルカマーラから《愛の妙薬》(実はワイン)を買い、それでつけた自信が裏目に出てアディーナはベルコーレと結婚する事となる。窮したネモリーノが薬の追加を買おうと軍隊に入隊、それを知ったアディーナがネモリーノへの愛に目覚め、二人は結ばれる・・・という物語です。

 

とても良く出来た、コミカルなストーリーのために、この作品は「他愛のないラブコメディ」と捉えられがちですが、実は作品の裏には、ともて切実で普遍的な人間ドラマが流れているのです。

 

その中のひとつが、ドラマ大詰めでヒロイン・アディーナによって歌われるセリフです。

 

「妙薬は本物よ、もし信じる心を与えたなら」

 

妙薬の中身はただのワインです。その意味で、妙薬はインチキです。

 

しかし、アディーナはこの妙薬の存在を通して、ネモリーノの愛を信じる事が出来ました。

そしてなにより、ネモリーノへの愛に気づく事が出来ました。

 

その意味で、「妙薬」は本物だったのです。

 

 

今回の《愛の妙薬》では、最後に村人全員が「妙薬」を手にします。

 

村人全員の心に愛があれば、妙薬を手にした全員が、幕が閉まった後、新たな《愛の妙薬》の主人公になれるかもしれません。

 

これが、「みんなの広場」に集ったみんなが、主人公になれる「広場のオペラ」です。

 

ながさきピース文化祭のテーマは「文化をみんなに」です。

 

私達ひとりひとりが、文化という人間の生んだ最も素晴らしいものを享受するに足る価値をもっている。

 

この「文化をみんなに」は「愛の妙薬をみんなに」という「広場のオペラ」のイメージと重なっていきます。

 

オペラ終演後、出演者一同で劇場ロビーに出てお客様にご挨拶しました。



ロビーにある素敵な大階段の前で、衣裳をつけたまま沢山のお客様とお話しする事が出来ました。

出演者とお客様が《愛の妙薬》の感動と興奮を共有したこのときが、もしかしたら「広場のオペラ」が完成した瞬間だったのかもしれません。