脳とは、肉体の外にある意識(魂)と肉体をつなぐ装置である

「臨死体験?  そんなもの、脳内の化学反応に決まっているさ」-
このように言う多くの懐疑論者は、英国の心理学者スーザン・ブラックモア(Susan Blackmore)の1993年の本-「Dying to Live」を参考文献として、よく利用しています。

「Dying to Live」は、臨死体験(NDE=Near Death Experience)は死につつある脳に関連した化学変化である、と結論付けている本です。

カナダのモントリオール大学教授マリオ・ボーレガードのような非唯物論者の神経学者(脳内の化学反応で説明できないことがあると認めている学者たち)、長い間、ブラックモアを批判しており、ブラックモアが主張していた20年前は、脳の研究の初期段階であったことを指摘しています。

ブラックモアは、人間が死ぬプロセスの間に起きる酸素(あるいは酸素欠乏症)の不足が、暗いトンネルの端で明るい光を見る幻覚に結びついており、これがビジョンをコントロールする脳の部分中のニューロン(神経細胞)の異常な発火を引き起こすかもしれないと主張しました。

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それに対して、ボーレガード教授は、もし酸素欠乏症(酸素の不足)がNDEの中心になっているとするなら、はるかにより多くの心停止患者がそのような体験を報告するはずだ、というオランダの心臓外科医ピム・ファン・ロンメルによる反対意見を引用しています。

オランダの心臓外科医ピム・ファン・ロンメルの主張
「人間の意識は肉体の中にあるのではない。 脳とは、肉体の外にある意識と肉体をつなぐ装置である。 
脳は単なる意識を受け取る受信装置に過ぎず、その意識は時空を超えた特別な場所に存在している」。

その上、ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校付属病院の医師であるサム・パーニアが指摘しているように、何人かの臨死体験を経験した患者の酸素レベルは正常で、臨死体験をしている間中、臨終状態ではなかったのです。
(彼の蘇生技術は素晴らしく、ニューヨーク病院の心停止蘇生率を2倍にしたほどです)。

パーニアは、「患者の酸素レベルを落とすことは、急性錯乱状態を引き起こすことにつながっており、臨死体験をした患者が明瞭な意識を持った状態で証言した内容と矛盾する」と述べています。

心臓蘇生の世界的権威・サム・パーニアの主張
「生と死の狭間には、それを遮断する壁のようなものがあるわけではなく、死とはプロセスである」。

「現在はっきりしているのは、人間の意識が消滅するわけではないということだ

「意識は”死”のあとも、数時間は存続する。外側からは見ることができない冬眠的状態であるとしても」。

( 「脳波停止の後」に残る意識:蘇生医療の最前線から WIRED 2013年5月2日)

この20年、研究が進み、医学が進歩するとともに、臨死体験は稀なこととされてきたのが、今では、ごく普通に起こることとして扱われるようになったのです。