防災士が選ぶ非常持ち出し袋


「非常持ち出し袋」は、すぐに避難しなければ命に関わるような危機が迫った場合に、自宅から持ち出すためのもの。一方で「備蓄」は、自宅にとどまる在宅避難を前提として、部屋の中に買い置いておくもの。この2つは別物として認識する必要があります。


非常持ち出し袋には軽量・コンパクト・少量など、持ち運びしやすいアイテムを選ぶようにしましょう。


※必要なもの一覧は記事の最後にまとめています。コピペして使える形式なので、家庭ごとにカスタマイズしてお使いください。



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「もう戻れない」覚悟で使う


どんな状況で持ち出すかの想定は、あなたの住環境によって大きく変わります。天災による倒壊、浸水、土砂崩れ、火災など。いずれも家を離れたら最後、もうそこには戻れない可能性があることを認識してください。


避難生活の各場面をイメージ


あなたの避難生活は、どこでスタートするでしょうか。公民館や体育館などの避難所、ホテルなど宿泊施設、自宅の庭や車中泊、親戚や友人の家などが考えられます。

避難生活での暮らしは、どんな1日になるでしょうか。朝起きてから夜眠るまでの1日を、丁寧に追いながらイメージしましょう。季節ごとの対応も必要です。


小分け収納を活用


持ち出すアイテムは小物ばかり。透明で口が閉じられるフリーザーバッグを使い、カテゴリーごとに分けた収納がおすすめです。中身が見えるので使うときに探しやすく、雨などに濡れても荷物が守られます。



重いものは上に詰める


荷物をリュックに詰めるときは、タオルなど軽いものが底のほう&体から遠くなるようパッキングしましょう。逆に水や缶詰など重いものは上のほう&体の近くに入れます。

リュックを支える肩と重いものの距離が近くなることで、下に引っ張られる感覚を和らげることができ、軽く感じられます。重い荷物を長時間背負って歩く、登山などの場面で重宝される荷造りのテクニックです。


入れたものは記録する


非常持ち出し袋には、かなりの品数を入れます。いざというとき、何が入っていたか確認する余裕はありません。「持ち出しアイテム一覧」を用意しましょう。できれば紙にプリントアウトして、リュックの一番上に入れておいて。スマホ用の専用アプリを使えば、更新しやすくスマートな管理が叶います。



かならず避難経路上に配置


非常持ち出し袋は、サッと手に取って家を飛び出すためのもの。かならず避難時に通る、玄関などの「避難経路」に置きます。押し入れや物置に入れないよう注意!

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手軽さ重視ならセット購入も◎


防災グッズをひとつずつ揃えるのは面倒……という方は、市販の防災セットを購入してベースにするのもアリ。防災用品のセレクトショップと災害の専門家が厳選した、防災グッズ24種類35品のセットがおすすめです。

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オリジナル防災セット「ターミナル」(22,800円/税込)

あなた専用のベストチョイスを


最後のリストは「ぜんぶ盛り」の状態。あなたが持ち出すべきものは、周辺環境や家族構成、年齢や性別や体質や体格によって変わります。あなたにとっての過不足を足し引きして、あなただけのベストチョイスを考えましょう。これは、市販の防災セットを購入した場合でも同じです。

以下では、カテゴリーごとの考え方を解説します。


避難時に使うもの


自宅から避難先までの移動をサポートするもの。街灯が壊れて真っ暗だったり、雨が降っていたり、雪道かもしれません。ヘルメットなどはリュックに入れず、近くに置いておけば十分です。



応急手当用の救急セット


災害発生後の3日間は人命救助が最優先されます。命に関わらないケガは自分で対応するしかありません。



必需品


あなたの生活に欠かすことができず、ほかでは調達しづらいもの。メガネや補聴器、持病の薬、入れ歯、サイズの合うオムツ、生理用品など。いまは感染症対策グッズも必須でしょう。



貴重品


避難生活を続け、生活を立て直すためのもの。大切な人の写真をプリントしておくと、捜索に役立ちます。重要書類は普段から1箇所に集めて保管しておき、いざという時まとめて持ち出すのも可能です。が、やはり非常時は一刻の猶予もないことを考えると、一式コピーを用意しておくことが望ましいでしょう。避難先で貴重品を身につけておくためのポーチなども忘れずに。現金は小銭や1000円札を多めに用意します。



情報収集ツール


避難生活に必要な情報を集めるためのもの。スマホが使えなくなる事態を想定して、大切な人の連絡先は紙のメモでも用意しておくことを推奨します。乾電池式のスマホ充電器や、携帯ラジオに使う有線イヤホンなども重要。



水と食料(最低限1日分)


避難先で支給される場合もありますが、自衛策として最低限の食料は持ち出します。とくにアレルギーがある方は、少し多めに用意できると安心。調理不要で軽量なものを中心に。



避難生活を支えるもの


睡眠や衛生面で役立つもの。避難所での睡眠対策(床の冷え・光・音)など、生活の質に直結するアイテムではありますが、あくまでも命に関わるものが優先。


もし空きスペースがあれば、汎用性の高いものから選びます。たとえばガムテープは、敷き物の固定や伝言メモの貼り付け、持ち物の記名、壊れた物の修繕、傷口の止血にまで使用できます。同様に薄手のストールも汎用性が高くおすすめ。



衛生・健康面を支えるもの


睡眠を支えるもの


快適な生活環境を支えるもの

夏/冬に使うもの


季節限定で必要になるものは、夏用と冬用で分けて用意。衣替えの時期に入れ替える習慣にすることで、ムダなスペースを省き、定期的な中身の更新に役立ちます。



家族によって必要なもの


自分自身では用意ができない子どもや赤ちゃんや高齢者、ペットがそれぞれ必要とするもの。


まとめ:完成後も更新は必要


かんたんに入手できるものばかりですが、生活を支える幅広いアイテムを揃えるのは、正直なかなか面倒くさいもの。一気に揃えようとせず、まずは予算を決めたりカテゴリーを絞るなど、少しずつ用意していくのがおすすめです。


非常持ち出し袋が完成すると「これさえ持って逃げれば何とかなる」という自信と安心感が高まります。とはいえ油断は禁物、季節物の入れ替えや非常食の交換など、定期的な見直しを欠かさずに更新し続けていくことが大切です。


執筆・監修:D.Sata/SAIBOU PARK/防災士


コピペで使える!必要なものリスト


◆避難時に使うもの

□リュック(防水仕様だと安心)

□持ち出しアイテム一覧のプリント

□歩きやすいスニーカー

□ヘッドライト

□懐中電灯

□ホイッスル/防犯ブザー

□軍手・革手袋

□ヘルメット

□雨具(ポンチョ、レインコート)

□避難先を書いた紙のメモ

□紙のハザードマップ

□数歩先を叩く棒きれ/傘


◆応急手当用の救急セット

□消毒薬

□脱脂綿

□ガーゼ

□絆創膏

□包帯

□三角巾

□毛抜き

□万能ナイフ


◆必需品

□常備薬・持病薬・おくすり手帳

□生理用品

□メガネ

□コンタクトレンズ

□マスク

□体温計

□消毒ジェルなど


◆貴重品

□身に付けられる入れ物(サコッシュやポーチ)

□現金(小銭を多めに)

□大切な人のプリント写真(裏に名前・連絡先を書く)

□緊急連絡先

□もし余裕があれば持ち出したい貴重品の一覧(書類、宝石など)

◎重要書類コピー

 □免許証

 □マイナンバーカード

 □健康保険証

 □通帳の表紙

 □クレジットカード券面

 □パスポート

 □加入保険の証書や契約書

 □年金手帳


◆情報収集ツール

□スマホの充電ケーブル

□モバイルバッテリー(電池式が良い)

□乾電池

□携帯ラジオ(手回し発電機能があると◎)

□ラジオ用の有線イヤホン

□電源タップ

□ノート

□筆記用具

□大切な人たちの連絡先メモ


◆水と食料

□水

□非常食


◆避難生活を支えるもの

◎睡眠をサポートするもの

 □フロアマット

 □枕

 □アイマスク

 □耳栓

 □アルミシート(羽織る、敷く、かける)

◎衛生面・健康をサポートするもの

 □非常用トイレ

 □トイレットペーパー(水に溶けるのでティッシュより◎)

 □洗面具

 □歯ブラシ

 □口腔ケア用品

 □ウエットシート

 □ボディシート

 □ビタミン剤

 □基礎化粧品(オールインワンタイプ)

 □タオル

◎食生活をサポートするもの

 □水筒

 □食器

◎快適な生活環境をサポートするもの

 □布ガムテープ

 □スリッパ(冷たい床対策)

 □レジャーシート

 □ビニール袋

 □ゴミ袋

 □薄手のストール/ブランケット

 □着替え

 □キャップ

 □タオル

 □給水袋

 □ランタン

 □本など(電気なしで時間を潰せるもの)


◆真夏もしくは真冬に使うもの

◎冬用

 □カイロ

 □保湿クリーム

 □防寒具(厚手の靴下、ニット帽、手袋、ウインドブレーカー)

◎夏用

 □アイスパック

 □汗拭きシート

 □塩タブレット

 □虫除けスプレー

 □日焼け止め


◆家族によって必要なもの

◎赤ちゃん

 □母子健康手帳

 □ミルク(液体タイプがベター)

 □哺乳瓶・マグ

 □ベビーフード

 □ベビー用食器

 □おしりふき

 □おむつ/使用後のおむつ入れ

 □ガーゼ(口腔内や体の清拭に)

 □授乳ケープ

 □抱っこ紐

 □おもちゃ

◎高齢者

 □老眼鏡

 □入れ歯

 □入れ歯洗浄シート(水が不要なもの)

 □成人用おむつ

 □折りたたみ杖

 □補聴器

◎ペット

 □フード

 □食器

 □療法食、薬

 □ケージ※

 □予備の首輪

 □リード(伸びないもの)

 □ペットシーツ

 □排泄物の処理用具

 □トイレ砂などトイレ用品

 □ブラシ

 □おもちゃ

 □飼い主の連絡先、緊急連絡先

 □ペットの写真

 □ワクチン接種状況や健康状態、既往症の記録

 □かかりつけの動物病院の連絡先