人は、日常の何気ない出来事は、忘れてしまっていると思っていますが、実は、ちゃんと記憶の引き出しにしまってあるのです
その閉まっていた引き出しを、ここぞというときに、人は開くことができるのです
数年前、突然、私の閉まっていた記憶の引き出しを、開ける瞬間がやってきました
ある日の午後、除草作業を終えて、家に帰ってきた母が、私に言いました。
「なんか、右目がおかしいんだけど・・・視野の下の方が、波打って見えるんだよね。全然痛くはないんだけど・・。」
私は、その話しを聞いて、ピンときたのです
これは、大変だと
そのとき必要な記憶の引き出しは、さっと引き出されたのでした
その昔、東京の花屋で働いていた時の、スタッフの子から聞いた話しを思い出したのです。
その子は、前に勤めていた花屋が、とても忙しい時期だったある日、目の調子が悪く、見え方がおかしいと感じていたけれど、痛みもなかったので、そのまま仕事を続けてしまったそうです。
そして、仕事を終えても、目の見え方が普通ではなかったため、やっと眼科に行って、診察を受けたところ、”網膜剥離”で、即入院となってしまったそうです
網膜剥離とは、眼球の内側にある網膜が剥がれて、視力が低下する病気で、早く手術をしなければ、失明もしかねない怖い病気です
その子は、手術が少し遅れてしまったため、前よりも視野が狭くなったと言っていました
そして、その子は、私に言いました。
「ちょっとても、目の見え方がおかしければ、痛くなくてもすぐに病院に行ってね」
遠い昔にしまわれていた、引き出しの中のエピソードがバッと甦り、私は、慌てて、母を車に乗せて、眼科へ直行したのです。
すると、やはり、診断は、網膜剥離でした
その日は夕方になっていまったので、翌日の朝入院、手術となり、かつて花屋のスタッフの子が教えてくれたことで、母の視野は欠けることなく、無事に網膜剥離を治療できたのです
母は、次の日は、村の夏祭りの当番で、目の痛みはなかったので、夏祭りが終わってから、治らなければ病院にいけばいいと思っていたそうです。
何気なく、私に症状を言ってみただけでした。
忘れていたと思っていても、ここぞというときには、記憶の引き出しは、引き出されるということに、人間って凄いと改めて感心しました。
そして、花屋のスタッフの子に、心から感謝感謝です
私も、誰かの記憶の引き出しに、そっと入れてもらえるよう、様々な体験を積み重ね、伝えていける人になりたいと思いました