高知に来て10年経ちますが、その前は東京に住んでいたので、東京や千葉の友達に会いに、年に一度は、東京に遊びに行っています。
そんな、東京に行く道中のお話しです
数年前の秋、年に一度の上京の日の朝・・・
自宅から車で35分の四万十市の中村駅へ、母に送ってもらいました。
いつも乗る、土佐くろしお鉄道の特急列車は、3両編成です。
私は、ホームの自由席の車両の位置に立ち、電車がくる方向を眺めていました。
すると、視覚障害者と見られる、白杖を持った30歳前後の女性と、その母親とみられる方が、仲良くおしゃべりしながらこちらへ歩いてきて、私に話しかけてきたのです
「娘が高知駅まで行くのですが、もし、高知駅まで行くのであれば、電車を降りる時だけ、見ていただけますか?いつもは、一緒に行くのですが、今日は私が行けないものですので。」と・・・
私は、高知まで行くので、「いいですよ。」とお引き受けしたので
す。
そして、私とその彼女は、9:24発の電車に乗り込み、一番前の席に2人並んで座りました。
それから高知まで2時間の、彼女と私の列車の旅が始まったのです~
私は、今まで、視覚障害を持たれる方と、接する機会がなかったので、どんなことを話せばいいのかと、少しためらっていました
すると、彼女は、私のそんな感情のエネルギーを感じ取ったのか、彼女の方からどんどん話しかけてくれたのです
私は、彼女がくれたレモンの飴をいただきながら、彼女が今まで行った観光地の話しに耳を傾けました。
彼女は、楽しそうに、高知の牧野植物園に行った時の話や、土佐清水市の海岸で打ち上げる花火を観に行った話など次々と話してくれたのでした。
私は、聞きながら、視覚障害者の方も、植物や花火などを観にいかれているということに、失礼ながらも驚いていました
彼女は、そんな私に、観て楽しむことは、視覚障害者も健常者も全く変わらないということを、教えてくたのです
”観る”というのは、目で観るとは限らず、心で観ることもできるということを
きっと、視覚障害者の方は、私たちが目で見ているもの以上の情報や美を、感じ取っておられるのでしょう。
私も、目で観るだけでなく、心でも観ることができたら、本当の美しさを感じることができるのかもしれないと思いました。
そうして、高知駅に電車は無事到着し、私は、彼女の手を取り、電車からホームに安全に降り立ち、お母様との約束を果たしたのです。
改札口では、数名の彼女のご友人がお迎えにきていました。
私は、「さようなら。」と彼女に言って、別れを告げ、心温まりながら空港へ向かったのでした。
今でも、中村駅のホームに立つと、時々、あの日の彼女との旅を思い出します。
一期一会の素敵な出会いは、多くの気付きをもたらしてくれたのでした