果たして”宇座公民館“とは?

住宅地に案外近代的な建物で、車も停めやすく、イソイソと中へ。

 

 

よかった。受付に女性がいらっしゃる。

「あのー、宇座の西井戸(イリガー)に行きたいと思っているんですが、一般の者でも行っていい場所なんでしょうか、、、」

紆余曲折があり過ぎて、私、かなり慎重です。

 

「イリガーですか? ええ、もちろん行けますが、よくイリガーをご存知ですね!

ねぇ、会長さん。」

 

会長さん? 振り返るとなぜかそこには会長さんと呼ばれた人がニコニコと。しかも手にはもう車のキーが。

なんですか、この展開。

会えるのか会えないのか、泣きそうになるくらい不安だったのに、私の後ろから自治会長さんがいきなり登場。

しかも地図に載っていない場所なので、軽トラで案内して下さるとの事。

 

 

あまりの展開の速さに呆然としている私に向かって、

「ゆっくり行きますからねー、軽トラの後、ついてきて下さいねー」

「ところであなた、なぜイリガーへ?」

 

来た!でも嘘は2回目、

「実は親戚が赤ちゃんを産みまして、そのお礼と報告に代わりに参りました」

少しスラスラ答えました。

 

「親戚の方、旧姓は?」

さすがの鋭い切り返しに、また私はなす術もなく

「わ、わ、わかりません!」

またもや不審者確定の私には構わず、会長さんはドンドン歩いて軽トラに乗り込まれてしまいました。

 

 

 

ふー、よかったのか悪かったのかわからないけど、こうなったら軽トラを見失わないように着いていくのみ。

頼むよ!ヴィッツ!(←あ、レンタカーです)

 

 

住宅地と畑の脇の細い道を何度も曲がり、絶対にたどり着けない所で軽トラは停車しました。

「番地もない所ですからねー、案内しないと来れないんですわ」

にこやかな会長さんの声に促されて白のヴィッツから下り立つやいなや、私の目は溢れる寸前まで涙でいっぱいになってしまったのでした。

 

 

ヤバい!

私は代理だ!

代理でお礼と報告をする人に過ぎない!

ここで泣くのはヤバすぎる!

頑張れ、河合典子!

素知らぬ顔をしてお礼参りをし、こっそり心の中だけで、自分の文章を生み出し始めた報告をするのだ!

 

 

それにしてもなんだ、この龍の気は。

ここらを取り巻く高まった龍の気と、西井戸を見た途端湧きあがった自分の生い立ちの記憶が相まって、私の我慢は決壊してしまいました。

 

 

「びえーん、ヒック、ヒック、(号泣)  」

あー、やっちゃった。

小学生くらいの少年、炸裂です。

お母さんが言ったことは嘘じゃない。

 

(続く)