会話は少なくても居心地のよかった昔の喫茶店。また行きたいと思えるレトロ
純喫茶と聞くと、私の頭に真っ先に浮かぶのは、父と幼い自分とで休日の買い物帰りによく通った、あの一軒の喫茶店です。特別な用事があったわけではありません。ただ、買い物を終えて家に帰る前、少しだけ時間が余ったときに立ち寄る、そんな場所でした。
店に入ると、決まって注文するものがありました。私はナポリタン、父はコーヒー、そして私は必ずクリームソーダも一緒に頼みました。ナポリタンは、イタリア料理を日本風に改良したと言われる、あの懐かしい味です。ピーマン、マッシュルーム、玉ねぎ、ウインナーをケチャップで和えた、今思い出しても無性に食べたくなる一皿でした。
父と私は、あまり多くの会話を交わしませんでした。無言のまま、店の雰囲気に自然となじみ、長い時間を過ごしていました。それでも居心地はよく、沈黙が気まずいと感じたことはありません。父は煙草を吸っていました。今ではあまり褒められた習慣ではありませんが、当時の私にとっては、それも含めて「父親らしい姿」でした。
店内では、しっかりと拭き上げられたグラスが照明の下で静かにきらめいていました。一人で座り、論文を書いている大学生が常連のように通っていたのも印象に残っています。子どもながらに、「大人の世界」を垣間見ているような気がしていました。
私の密かな憧れは、プリンアラモードでした。メニューを見るたびに心が惹かれましたが、結局一度も頼むことを許してもらえなかった記憶があります。それもまた、今となっては大切な思い出です。棚には酒瓶が並び、夜はバーになるのだろうと思わせる、どこかおしゃれな空間でもありました。
大人になった今、たまに一人で喫茶店に入ることがあります。一人で座っていても、孤独を感じることはありません。もともと、そういう時間を受け入れてくれる場所だからこそ、安心できるのだと思います。振り返れば、若いころによく行った場所は喫茶店でした。あの頃の空気とともに、今も心の中に静かに残っています。
