詩
どこかで春が 生まれてる
どこかで水が ながれ出す
どこかでひばりが ないている
どこかで芽の出る 音がする
山の三月 東風吹いて
どこかで春が 生まれてる
詩の考察
意味のご説明は要らないでしょうけど、「東風」について少しだけお話を。
百田宗治はこどもの歌に、雅語(雅な言葉のこと)のように古い言葉を使うことを少しためらい、ここを<そよ風>とか<春風>に変えてみたりしたそうです。
でも、やっぱり美しい日本の言葉として、もとの「東風吹いて」という表現で仕上げました。
こういう美しい言葉、日本語の繊細な表現、日本人の豊かな感性など、学校で先生が教えてほしいものです。
東風はただ東から吹く風と言うのではなく、春がやってきたことを知らせるという意味合いがあります。
春風とも言います。
冬の北風からだんだん東風が多く吹くようになって、春を感じ、春の兆しをあちこちで見つける楽しみを覚えるのです。
まだ春じゃなくて、<春の兆し>です。
雪解け水が流れ出す音、雲雀がさえずる声、小さい芽が出る音・・・それらを感じて春の来るのを喜び待ちわびるのです。
詩の誕生
大正12年3月、子ども向きの雑誌 『小学男子』 で発表されました。
草川信
明治26年(1893)長野県松代の生まれで「赤い鳥運動」に作曲家として参画し、童謡の傑作をいくつも世に送り出しました。
いくつか挙げておきます。
風 (誰が風を見たでしょう・・・)クリスティナロゼッティ・西條八十 詩
夕やけこやけ (夕焼小焼で 日が暮れて・・・)中村雨紅 詩
汽車ポッポ (汽車汽車ポッポポッポシュッポ・・・)富原薫 詩
揺藍の歌 (揺籃のうたをカナリヤが歌うよ・・・)北原白秋 詩
春の唄 (桜の花の 咲くころは・・・)野口雨情 詩
みどりのそよかぜ(みどりのそよ風いい日だね・・・)清水かつら 詩
ひばりのお話
ヒバリは、麦が伸び、あちこちで草の緑が目につく頃になると、空高く舞上がって歌い始めます。
それはラブ・コールなのですが、東北地方に面白い民話が残っています。
ヒバリは太陽にお金を貸しているので、毎日空高くのぼって行って、「ヒイチブ(日一分)」と鳴くのだと言うのです。
利息が日一分、日一分(ピーチク、ピーチク)・・・
と鳴くなんて、なんて発想でしょう (^^;)
<ひばり> の語源は 「日晴り」 だとされています。
よく晴れた日にことさら高くさえずるからでしょう。
200mほど昇り、長い時は30分もさえずっているのだそうです。
やっぱり歌曲ってすてき
の。