詩
あの子は町まで お使いに
この子は坊やを ねんねしな
夕べさみしい 村はずれ
コンときつねが なきゃせぬか
叱られて 叱られて
口には出さねど 眼になみだ
二人のお里は あの山を
越えてあなたの 花のむら
ほんに花見は いつのこと
詩の意味と考察
この詩の意味については憶測からの解釈で諸説あります。
詩は本来詩人の書かれた心をそのまま理解しなくてはいけない訳ではなく、大きく間違っていない限りは、それぞれ各人が生きてきた道に照らし合わせて、想像の世界で解釈すればいいものです。
普通に考えると、奉公に出された子供が叱られてお使いに出されたり、子供を背負って子守りをさせられている子が、さみしい村はずれを急いで帰るうす暗い道を想像できるかと思います。
ただ、清水の生い立ちを考え、深読みする人が多いのも確かです。
清水は東京深川生まれで、4歳のときに2歳下の弟が亡くなり、母は病にかかり離縁されてしまいます。
その後は継母に育てられることになりますが、新たに兄弟が何人もできて、どのような家庭環境だったかと憶測が始まります・・・。
この詩は幼い頃に母と生き別れた悲しみを歌っているとか、「あの子」と「この子」は、自分と幼くして亡くなった弟を意味しているとか、2番で歌われている「二人のお里はあの山を越えてあなたの花のむら」の所の「花の村」は母のいる村だ、と解釈する人もいて、諸説あります。
本人に尋ねない限り、どれも真偽のほどはわかりませんので、皆さんが好きなように想像して下さい。
とにかくは、昔は子供は家の手伝いをしましたし、奉公に出された子もいましたし、叱られて遠くまでお使いに出され、暗い夜道を急いで家に帰る気持ちは誰にでも理解できますから、とても郷愁を誘うどこか懐かしい世界ではあります。
詩の誕生
大正9年、雑誌「少女号」の4月号で発表されました。
歌の考察
メロディーは大変美しく、淋しさを充分表現していると思いますが、子供が歌うにはちょっと難しく、郷愁を感じてしっとり歌う大人の歌になっています。
一人で口ずさむと涙が出てきそうなセンチメンタルな曲です。
清水かつら の歌
少女雑誌『少女号』(1916年創刊)や『幼女号』『小学画報』の編集に携わるかたわら、童謡の作詞を手掛けていました。
かつらの童謡でよくご存じの歌をあげておきます
くつがなる 曲 弘田龍太郎 (おてて つないで の道を いけば…)
雀の学校 曲 弘田龍太郎 (ちいちいぱっぱ ちいぱっぱ…)
叱られて 曲 弘田龍太郎
みどりのそよかぜ 曲 草川信 (みどりのそよ風いい日だね…)
弘田龍太郎 の歌
「叱られて」と上に書いた以外の歌を書いておきます
雨 詩 北原白秋(雨が降ります雨が降る…)
キューピーさん 詩 葛原しげる(キューピーさん キューピーさん…)
お山のお猿 詩 鹿島鳴秋(お山のお猿は鞠が好き…)
金魚のひるね 詩 鹿島鳴秋(赤いべべ着た可愛い金魚…)
浜千鳥 詩 鹿島鳴秋(青い月夜の 浜辺には… )
春よ来い 詩 相馬御風(春よ来い早く来い…)
小諸なる古城のほとり 詩 島崎藤村(小諸なる古城のほとり… )
やっぱり歌曲ってすてき
の。