楽しや五月 草木は萌え
小川の岸に すみれ匂う
やさしき花を 見つつ行けば
心もかろし そぞろ歩き

うれしや五月 光は映え
若葉の森に 小鳥歌う
そよ風わたる こかげ行けば
心もすずし そぞろ歩き

 

 

  詩の意味と考察

意味は書かなくてもそのままですね。

5月の青空の下、心浮かれるような散歩の歌です。

 

 

  歌の背景

元歌はモーツァルト作曲、オーバーベックの詩のリート (ドイツ歌曲)

   K596「Sehnsucht nach dem Fruhling (春への憧れ)」

この歌のメロディーに 大和田健樹が作詞して、明治23年「上野の岡」として『明治唱歌』の中で発表されました。

その後、昭和22年に青柳善吾が作詞した上の歌詞で六年生用の教科書に載りました。

 

 

  明治唱歌の歌

『明治唱歌』で紹介されたものが下の写真です。

昔の子供たちはこんな難しい文字を読んでいたのですね・・・わかりやすく書いておきます。

ピンク音符ピンク音符ピンク音符

上野の岡

春のさくら 秋のもみじ

ながめたえぬ 上野の岡

知るやむかし あの木陰に

ふりみだれし 矢玉の雨

 

ゆうべ霞む 忍ばず池

岸の火影 高くひくし

やなぎを吹く 風のほかに

いまは聞かぬ ときの響

 

さすが明治時代の歌、戦争が歌われています・・・。

旧幕府軍と薩摩長州の新政府軍との間で行われた戊辰戦争の一つで、上野の寛永寺あたりが舞台になった上野の戦いが歌われています。

 

 

 

  モーツァルトの歌

春が来るのを待ちわびる子どもたちが近づく春に胸を弾ませているという内容の詩にモーツァルトが作曲しました。

ドイツ語の訳詞は人によって少しイメージが変わりますが、この訳が可愛いかなと思い載せておきます。参考程度に。

ピンク音符ピンク音符ピンク音符

来てね、五月さん、そして
木々をまた緑にしてね。
そして、小川の岸に
小さなすみれさんを咲かせてね。
本当にお願いね、
私はまたすみれさんを見たいよ。
ねえ、五月さん、私は本当に
また散歩に出かけたいんだよ。

 

ブルー音符ブルー音符ブルー音符

ドイツではとても有名で多くの人に愛される歌のようです。

詩を読んでおわかりのように、元歌は「早く来てね五月さん」と、今はまだ冬。

でも日本で歌われるものは 「楽しや5月草木は萌え」 と、さわやかな5月を歌っています。

この歌のリズムといい、弾むような音型といい、春を待ちわびる心と言うよりは、日本の歌詞の、今5月真っ盛りで、楽しいな、うれしいな、と歌う方がよりぴったりかも知れません。

日本でもたくさんの人に愛される歌になって欲しいと思う歌です。

 

 

やっぱり歌曲ってすてき!

の。