カラオケのバイトでレジをやっていたら二人組の太ったおっさんが帰るために会計をしにきた。

プレートを貰って値段を言うと片方のおっさんAが「やべ、財布がない」と言って鞄をあさり始めた。
どうやら部屋の机の上に財布を置きっぱなしにしてたようで「すいません、ちょっととってきます」と言ってエレベーターの方に歩いていった。
しかしエレベーターがなかなか来ない。
残されたもう一人のおっさんBはAに向かって「はやくしろよ もう階段で行けよ」と笑いながら言った。
おっさんAは「まぁ、いいじゃん」と歯切れ悪そうだった。おっさんBはそれ以上言及しなかった。
自分のバイトしてるカラオケは1階にレジがあって、おっさん達の部屋は3階にある。
まぁ結構太ってるから階段はしんどいよなぁと思ってるとおっさんBが「ほんとすいませんね、待たせちゃって」と言ってきた。
特に混んでないのでとりあえず「大丈夫ですよ」と言った。
その間も全然エレベーターが来ない。
おっさんBはへらへらしながら「いやほんとすいません、おい!はやくしろよ!この………ハゲ!」とAに向かって言った。
いやデブじゃないんかい、と思った。
むしろ結構ふさふさだった。

太ったおっさん二人組が帰った後、客が来ないレジでぼーっとしながら考えていた。
あのおっさん達、もしかして両方共デブなのに互いにデブいじり出来ないタイプの珍しい二人組だったのではないだろうか。
最初のエレベーターも「いや太ってるから階段しんどいんだよ!」と返してもおかしくないだろうし、「はやくしろこのデブ!」「お前もデブだろ!」くらいのやり取りをしてもらいたかった。
とにかくあのおっさん達がいつか笑って互いにデブを弄りあえる日が来ることを祈りながらバイトをしていた。

まぁもしくはあまりにもデブいじりをやりすぎてもう飽きた二人だったのかな、と思った。