あんまり話したことない先輩2人に連れられて小洒落た小さいイタリアンレストランに行った。
そこで人生で初めて「海老のアヒージョ」を食べた。
海老がなんだかよくわからない汁に浸されていた。
自分の中では代官山と並んで「聞いたことはあるけど実際にあるか分からないお洒落なもの」の筆頭だったアヒージョだが、とても美味しくて感動した。

俺はある程度食べたところで、皿に残った汁を見て思った。
「この汁を飲んでみたい…!」
しかし俺はぐっと堪えた。
汁の量的にもアヒージョはスープ系の料理ではない。なので更に残った汁を飲むなんて行儀が悪いに決まってる。
ここは小洒落たレストランなのだ。そんなことしてたらつまみ出されかねない。
さらに、ここにいるのはあまり話したことのない先輩だ。アヒージョの汁を飲んで「なんだこいつ…」みたいな空気になったら最悪である。
俺がさりげなく汁のついたフォークを舐めてると、先輩の一人が「この汁うめーな」といいながら皿に残った汁を啜りだした。
もう一人の先輩も啜りだした。
なので、俺も汁を啜った。汁は海老の風味がしてとても美味しかった。

そのイタリアンレストランはとても洒落ているので、メニューのパスタの種類がボロネーゼと季節のパスタの2個しかなかった。なのでその2つを3人で分けようという話になった。
ボロネーゼはとても美味しく、すぐに無くなったが、もう一つの季節のパスタである野菜のジェノベーゼは誰も手をつけなかった。
ジェノベーゼはあまり美味しくなかった。というかなんか青臭くて不味かった。所詮レギュラーメニューになれない雑魚だった。

最初の楽しい空気はどこへやら、無駄に大盛りにしてしまったこの青臭いパスタを誰が処理するかの押し付け合いが始まった。
しかし、俺は思いついた。
このパスタをさっきのアヒージョの汁に入れれば、海老の風味で青臭さが消えるのではないだろうか。
俺は早速、この争いをおさめる逆転の一手を先輩達に提案した。
先輩は「それはないだろ」と言った。
俺は「ですよね」と言った。

後で調べてみたら、汁の正体はオリーブオイルだった。
なんか気持ち悪くなった。