世の中には、原作に対して予備知識が無い人がいる。つまり原作を読んでいない人。

原作を知らない人でも満足できる実写化作品こそが、クオリティの高いものと言える。

自分があげるとすれば、昨年末にNHKで放送された「岸辺露伴は動かない」がまさにそれだ。

原作を知らない人からすれば、「世にも奇妙な物語」のロングバージョンを見ているような感じだろう。「ジョジョの奇妙な冒険」ファンだけでなく、目の肥えたドラマファンからも絶大な評価を受けた。

主人公である岸辺露伴は、「ジョジョの奇妙な冒険」の第4部に登場する漫画家で、16歳の頃から「ピンクダークの少年」を連載し、若くして一軒家を持っている。性格はエゴイストで、面白くリアリティのある漫画を書くことを重要視していて、ネタ集めのためなら蜘蛛を舐めるなど手段は選ばない。

ドラマの始まりは、「岸辺露伴とは何者なのか?」というところから始まる。「第8部の連載が始まったばかりだ!」というセリフは、ジョジョに対するリスペクト(敬意)である。

実写化が成功した要因を挙げればきりが無い。主演の高橋一生やプロデューサー以下スタッフのジョジョ愛もあるが、一番の要因は原作アニメ第3部からシリーズ構成を担当(第6部も担当)しているアニメ脚本家・小林靖子の起用は大きかった。

なにせジョジョの世界観を最も熟知している人が、実写でも脚本を書いたらスゴイことになってしまったのである。第2話での「ビチクソ」発言は、原作を知っている人でなければ出ないセリフである。

アニメで声を担当している櫻井孝宏の起用も大きかった。DVD BOXのプロモーション動画のナレーションも担当した際は、「本物の岸辺露伴が2人もいる!」と大喜びした人も多いはずだ。


世の中には、「ジョジョの奇妙な冒険」に対して食わず嫌いの人がいる。そういう人は間違いなく、ホラー映画を苦手としている人だ。原作者である荒木飛呂彦先生はホラー映画が大好きで著書も出したほどだ。

第3話の「DNA」という話では、ハッピーエンドで終わっている。これは原作が別冊マーガレットで掲載されていた影響である。原作では精子バンクだが、ドラマでは臓器移植に変更されている。


ジョジョを知っている人でも知らない人でも、誰にでも楽しめるように、原作に対する敬意があって製作されたからこそ、多くの人に評価された実写化作品であることは間違いない。

きっと第4部の実写映画を見て不満を持った人たちが集まって、「俺たちならこうする」という熱意を持って作られたに違いない。今度の年末の続編が楽しみで仕方がない。