私が生まれ育った街の近くに"芦屋"があります。兵庫県の沢山ある市の中でも特に小さい市の一つとして知られているにもかかわらず、その存在感は圧倒的です。そう思うようになったのは私が結婚してから関東に住むようになって関西エリア、特にホームタウン周辺を、外から見る機会が出来たからです。時々里帰りしてまた関東に戻ると「今まで当たり前だと思っていた関西での生活は、実は独特だったのだ」と気づかされました。とくに芦屋周辺の街並み、邸宅、ファッション、洋菓子店、お稽古サロン、コミュニティ、センスは世界広しと言えど、芦屋独自の物だと思います。芦屋は芦屋と言う、一つの文化なのです。
私はこれまでにニューヨーク、パリ、シドニー、東京のような世界の中でもハイセンスを謳われている街を訪れましたが、それらの何処にも属さない、唯一無二の雰囲気を芦屋は持っていると思うのです。
六甲山とこじんまりした甲山を仰ぎ見ながら反対側を見ると芦屋浜とヨットハーバーが見えて、その辺りの海沿いの邸宅にはクルーザーを停泊させている家も…街の中には芦屋川が流れていてリバーサイドには素敵なイタリアンがあって、山道を登って行くにつれて大豪邸が増えていき、厳しい住居基準と建築協定の六麓荘町や有料道路の先の奥池町という豪邸群があり…。
山と海を一望できるところはお隣の神戸も同じですが、豪邸エリアの区分や芦屋ならではのセンスが芦屋住人と言うプライドを生み、他の街と一線を画しているのだと思います。センスという点ではご年配の方のファッションが特に素晴らしく、山や海に映えるすごく発色の良いブルーやグリーンを取り入れた洋服にヘアスタイルやメイク、バッグや靴に至るまで抜かりがありません。多分デイリーのお買い物に来られただけなのに、さり気なくハイブランドのバッグだったり靴だったりで纏めておられるのです。どう見ても実年齢より10歳は若いです。
私が一番驚いたのは幼稚園ママです。自分が幼稚園ママになってみて、芦屋の幼稚園ママがいかに凄いかがわかりました。
芦屋周辺には名門幼稚園がたくさんあり、午後になると芦屋駅付近にはたくさんの園児&ママが出没しますが、小さい子の送り迎えや相手をしているはずなのにママは髪の毛が綺麗にクルンと巻き髪になっていて、光沢のある肌にツヤツヤリップ、サロンで仕上げたと思われるネイル、そしてこれからパーティに出席されるのでは?と思ってしまうようなシフォンのフワフワのスカートにハイヒール…。でもこれは彼女達にとってごく普通の日常の幼稚園送り迎えスタイルなのです。私も娘を送り迎えの必要な幼稚園に入れましたが、娘の支度に忙しい朝にあんなに綺麗に髪を巻いたり、朝からあれ程バッチリメイクで通園するのはとても無理でした。美意識の高さが違うのだと思います。
それでいて芦屋マダムは関西人の開けっぴろげでお人好しの面があり、自分の事も包み隠さず話したり、ユーモアたっぷりに周りの人を笑わせたりします。こういう所が関東の高級住宅地のマダムとは違う点だと思います。色使い、ブランド使いのファッションで外見は完璧、でも内面の飾らない素顔を晒す事が出来てしまうのが芦屋マダムなのです。
立地条件や発展して来た歴史が"芦屋"という独自の文化を作ったと思いますが、時々訪れると良い刺激を受け、外見、内面共にワンランク上を目指そうとやる気が起こる素敵な今でも憧れの街、それが"芦屋"です。