音楽漫画の金字塔と呼ばれている「To-y」の作者である上條淳士先生の展覧会へ行ってきました。
場所は東京文京区にある弥生美術館。
近くの駅である根津駅にも美術館へも初めて足を運びました。
この作品が連載されたのは私が浪人して予備校へ通い始めた1985年の春でした。
高校時代にろくに勉強もせずギターばかり弾いていた私は、なかばこうなる(浪人生となる)事を分かっていたつもりでしたが、実際にはとても辛い1年でした。
時代はバブル華やか頃で現役で進学した同級生たちは楽しく遊び回り、それを横目で見ていた私は劣等感に苛まされながらの1年間を過ごしました。
当時の一年ですから今の一年とは体感上だいぶ違ったのだろうと思います。
友達も限られ、遊びにも行けず何となくギターを弾くのも躊躇われるような毎日でした。
数人の予備校の友人と今は川越へ移転してしてしまった埼玉の町中華の名店「慢慢亭」で昼食を摂るくらいが密かな楽しみでした(予備校は埼玉県の大宮にありました)。
理由はよく覚えていないのですが当時、少年サンデーに連載されていた「To-y」を第一話から読み、すっかりファンになり単行本も全巻初版本を買い揃えました。
もちろん作中で「To-y」がやっていた音楽は当時私が好きだった音楽とは違うと思うのですが、とにかく各キャラクターがカッコよくて好きでした。
結局、「To-y」がやっていた音楽はどんなものだったんだろう?とよく考えました。
ストーリーの初期はパンクのようでしたが、メジャーデビュー後の音楽は明らかに違うと思います。
ではライバル的存在であった哀川陽司のモデルだった吉川晃司さんのような路線だったのか?
それも違う気がします。
作中ではマネージャーの加藤さんの元バンド仲間であるハリー(鮎川誠さんがモデル)やアンとセッションしてインプロヴィゼーションに頼った音がであるというようなことが描かれていますが、それはどんな音楽だったのでしょう。
あれこれ考えるだけでも楽しいですね。
きっと正解は誰にもわからないでしょう。
私は「To-y」のようにカッコよくはなれませんでしたが、辛い時期を支えてくれたこの作品が今でもとても好きです。
この原画展は来年1月まで開催されるようなので、たぶん開催中あと数回は足を運ぶと思います。