やらかした。


 やらかし自体は普段からそこそこあるのだが、最近ではやらかしても「まあしかたないや」で済ますことが出来るのだが、今日のやらかしには凹んでいる。 


 ピアスを買ったのだが、なんと全く同じピアスを既に持っていたのである。

 凹むと同時に、これは認知症なのではないか、と心配もしている。


 老化による物忘れと認知症の違いは、前者が経験の一部を忘れることに対して後者は経験そのものを忘れる、という点にある。

 例えば今朝何を食べたか忘れるのが物忘れで、今朝ご飯を食べたこと自体を忘れるのが認知症である。 


 そして知的障害者は40代50代から認知症に罹患する確率が健常者よりぐっと上がる傾向にあり、私ももしかしたら認知症になっているのでは?と最近よく不安に思っている。 


 今回のピアスの件は認知症の症状に近いものを感じる。ピアスを買う時に、なんの迷いもなく、最近ピアス買ってないしこういうデザインのピアス持ってないな、と思いながらポチッたのだが、ピアスを買った記憶も同じデザインのものを既に持っていることも忘れるのはちょっと深刻かな、と感じる。


 こういった認知症のような症状が実は最近頻発しているのである。 


 先月内科でレントゲンを取ることになった。 

一週間お腹を下し続けたことが理由で、何ともないだろうが一応取ろう、という話になったのだ。「レントゲン室分かるよね?」先生からそう言われて「いえ、分からないです」と苦笑交じりに答えた。

 この病院には数年前から通っており、先生の中では私はレントゲン室は当たり前に知っているくらいにレントゲンを取ったことがあると思っているのだろうが、この病院でレントゲンを取るのは始めてである。

 怪訝な顔をしながら先生は「じゃあ看護師に案内させるから」と言うと看護師さんが二階のレントゲン室に案内してくれた。

 始めて入ったレントゲン室である。

 レントゲンを取り終えるとさっそくレントゲンの結果を持って再度診察室に入る。

 「うん、なんでもないね。これが2022年のレントゲンなんだけどね」 

?! 

2022年? 

つまり過去にレントゲンを取ったことがあるってこと?

嘘だ。 

先生が操作するパソコンのモニターを見ていると、私のレントゲンを格納したフォルダが目に留まった。

 先生がフォルダを開くとなんとそこには5枚のレントゲン写真が入っていたのである。

 え?私過去に4回もレントゲン取ってるの?

 私は戸惑った。

 レントゲンなど本当にその日が初めてだったからである。 

しかし私の記憶とは裏腹に記録では今回が5回目のレントゲンとはっきり物語っているのだ。

 そりゃあレントゲン室の場所心得てると思うわな。

 過去4度も取ったレントゲンの記憶が消えている。 

これはちょっと尋常ではない。


 他にもこんなことがあった。


 と書いて自分がどんな経験の喪失を体験しているかさっぱり忘れていることに気づく私はやはり認知症を強く疑うべきなのかもしれない。