バイトをしようかな、と真剣に思っている。
契約社員になってから思うように貯金が出来なくなってしまった。

契約社員になったのだから派遣時代より貰ってるんじゃないの?と思われるだろうがそんなことはない。
派遣時代より多少給料がアップしたのは事実だが大した賃上げではない。
給料はおそらく新卒の子とそうそう変わりないと思われる。
ちなみにうちの新卒の月給はごくごく平均的な新卒の月給である。
40代の私には少ないと言わざるを得ないだろう。

しかし雇って貰って戴けているだけでもありがたいのだ。
これ以上の賃上げを会社に望むのはお門違いもいいところだ。

そこで考えたのが副業だった。
金がないなら金を稼ぐしかないだろう。

私には今切実に欲しいものが2つある。
一つはドレッサーで16000円程のもの。
もう一つは自転車で、こちらは中古で10000円を切るもので十分だと感じている。
仮に両方買ったとしても出費は26000円だが、悲しいことに安月給でボーナスなしの私にはこの出費は痛すぎる。
チャリの10000円だけだとしても今の私には激痛である。
同時に四十面下げて10000円も捻出出来ないのは情けなくもある。

だがいつまでもくよくよしていても始まらない。
バイト探しをしなければ。

しかしうちの会社は副業禁止。
となると手渡しで給料を貰えるようなバイトしか出来なくなる。
パッと閃いたのが、昔幾度となくやった日雇いの単純作業だった。
だが日雇いバイトを雇う会社は意外とまともなところが多く、所得が増えて副業が会社にバレる危険性を感じで日雇いは諦めた。

次に思いついたのが水商売だった。
何となく、何となくだが、スナックみたいな店なら会社バレは避けられる気がした。
そして調べてみるとからくりは分からぬが確かに会社バレはしないようだった。

スナックなら履歴書も不要で、即日勤務可能な店もたくさんある。
私はさっそくスナックに絞って求人を検索した。

隣駅に何軒か40代でも働けるスナックが見つかった。

でも。

過去の記憶が頭をもたげる。

オーダーの取り方がチンプンカンプンで、会話にも上手く入れずすぐにくびになった2軒のスナックを思い出す。
一つの店では「貴方は性格がちょっと」とはっきり言われた。
それを思い出してスマホを放り出した。

昨日、後輩の大熊くんと喋っていたらコミュ力の話になった。
彼によればコミュ力が高い奴は絶対に自己肯定感が高いんだそうだ。
周りを見渡して本当にその通りだと気がついた。
観察してみると自己肯定感の高さとコミュ力の高さは比例するようだ。

自己肯定感か。
性格がちょっと、というのはコミュ力がちょっと、ということだ。
では今の私はあの頃より自己肯定感が上がったかと言えばそうでもない。

スナックの仕事はオーダーよりも会話に上手く入れないことのほうが苦痛だった。
無論これは被害妄想だが、会話中針のむしろに座っているようで酷く神経が参ってしまうのが常だった。

あの環境にまた戻ることを考えると、たとえそれが週1回の5時間程度であろうと、うんざりしてしまう。
きっとスナックのバイトをしたらまた病んでしまうだろうと結論づけてバイトは諦めることにした。

もう少し私の自己肯定感が高ければバイトも出来たろうに。

小さい頃からのいじめ、社会に出てからの挫折。
そんなことを繰り返すうちにどんどん下がっていった自己肯定感。

言うまでもなくいじめや挫折の根底にあるのは境界知能だ。
自己肯定感の低下はつまり境界知能が招いたものだ。

境界知能の診断が下ってから5年近く経ったが、私は今も完全にこれを受け入れているとは感じられない。
ある程度どうしようもないこと、とは思えるようになったが、今日みたいにふとした時に自分は境界知能だと思い知らされては地団駄を踏みたい気持ちに駆られる。

今夜は雨がしとしと降っている。
私の心にもにわかに雨が降りだした。

黒買いました。