横溝正史さんは、中学から高校、二十歳前くらいにやたらと読んでいました。
まだ角川文庫から百冊前後の点数が発売されていた頃です。
この時は、最終的には非シリーズ系の短編集にまで手を伸ばしていましたが、何故か人形佐七はそれほどでもなく、ジュブナイル物は『金色の魔術師』と『怪獣男爵』くらいだったと記憶。
人気の金田一耕助シリーズは、その後も映画化やドラマ化されて、主要な作品は現在でも割と有名だったりしますが、そうでもない作品もあったりします。
僕自身、1度は読んでいるはずなのにストーリーをほとんど覚えていないものが多数あります。
消費税導入の悪影響で一時本屋さんから姿を消したこれらの作品のうち、何冊かが店頭に戻って来ているのを見て、久しぶりに読み返してみたい気になりました。
それで、今回の『白と黒』です。
金田一耕助物は、都会を舞台にしたものと田舎を舞台にしたものがあって、辺鄙な地に行った方が面白いとの印象あり。
今作は新しく出来た団地が舞台で、そこで男女間のスキャンダルを密告する怪文書が横行し、やがて殺人事件が勃発します。
昔馴染みのBARで働いていた女性から相談を受けた金田一さんが彼女の部屋を訪れますが、その矢先に団地内で死体が発見されて騒ぎになります。
しかも、その死体は頭の上からタールを流されていて顔の判別もつき難いものでした。
顔の無い死体とは、横溝正史作品によく出てくるパターンで、言い方はおかしいですがこれでちょっと嬉しくなります。
主な舞台は団地のみ。
正体不明の人物もいるものの、途中でおおよその登場人物が出揃います。
特に若い男女グループの存在は、どんよりしがちな作品全体の雰囲気を明るくしてくれているな〜と。
ストーリーも現代風でなかなか読みやすくて、面白かったです。
まぁ、数年経ったら、また記憶が薄れてそうですが。
☆☆☆★★
次は、有名な作品ですが、これまた久しぶりの『悪霊島』か『夜歩く』あたりを読んでみたいと思っています。
