三次創作小話「忘羨その後」(120-5)



(静室にて)
ウェイインとランジャンの間に座っているのは、そのふくよかな後ろ姿形から、女人だと分かる。

「この方は、林(りん)先生です。疫病の第一人者です。
何年も前ですが、ニン叔父と疫病の治療をされたことがあります。
今日は、たまたま診療所においでになられた所を、ここまで来て頂きました」
スージュイが言うと、

「温ニン殿には、いつも貴重な薬草を分けて頂いています。
今回は、私の出番はなかったようです」
緊張が溶けたように微笑んだ。

不思議な魅力の持ち主だと沢蕪君は思った。
(顧シアンのように、顔貌が整っている訳ではない。
どちらかというと、ぽっちゃりとした頬。
切れ長の目は半眼のようで、高い鼻と薄い上唇。慈愛を感じる。
まるで、菩薩のような顔立ちだ)

「では、風邪をこじらせたという事ですか?」
その声に振り向くと、いつの間にか、ジンイーが背後から覗き込んでいた。

「他の病でなければ、精神的な理由かもしれません。
体内の抵抗力が、“心の持ち様”で低下してしまう事があります」
温ニンは、たった今、到着したばかりで、肩から荷物を降ろしている。
 
「心の持ち様?…やはり、ユンユンとファファとの別れが原因ですか?」

「はい、我が子を失くしたと思えば、その悲しみの深さはとても計り知れません」

沢蕪君も大きくうなずく。
「もしも私が、我が子に会えなくなったら、とうてい立ち直れないでしょうね」

「でも、治りますよね。
お二人の丹力ならば、病に負けるはずがありません」
ジンイーが皆の顔を窺う。
つづく