何の情報も無しに大都会に着く時というのは、いつも緊張する。小さな街であれば 街の中心は一つしかなく、たいていその街の中心に行けばそれなりの宿を探すことができ、その後の情報も仕入れる事ができていた。ところが大都会というのは 街の中心的なものがあちこちに分散し、更にバスターミナルもいくつかあったり あるいは街から大分離れていたりする。今日もそれは同じだった。実際に 今でも自分はいったい街のどこに居るのか分かっていない。自分の場所を 頭のなかで映像化できないのは、どうも座りが悪い。

 アンカラはまさに突然出現した。田舎に一本道を走っていると思ったら、 荒涼とした大地の向こうに突然大都会が現れた。高層ビルがいくつも 出現する。バスターミナルは思った通り郊外にあり、バスはそんな大都会 に入るやいなやすぐに大きな、大きなバスターミナルに停まってしまった。 まるで空港を思わせる近代的なバスターミナル。まだ新しいらしく そこら中がピカピカだ。けれどもどういう訳かあまり 人がいない。閑散としたバスターミナルは無機質で、 あまり気持ちの良いものではなかった。

 


アンカラの街並み


 さっそく地図を買おうと思ったが、どこにも売っていない。しばらくうろついて いると、ターミナルの 表示にここから地下鉄が出ていることが書かれていた。きっとこの地下鉄に乗れば 街の中心的な所に行くだろうと思い、地下鉄の駅を目指す。地下鉄の駅は ターミナルのビルに付属していて、そこまでは動く歩道まである。こんな近代的な 大都会は久しぶりだ。

 切符は日本のテレホンカードの様なもので、もちろん自動改札。困った事に 1回券というのは販売していなくて、だから5回分を一気に買わなくてはいけなかった。 またここに戻ってくる分を考慮に入れてもあと3回地下鉄に乗らなくてはいけない。 なかなか不便なシステム。料金はこの5回券で500000TL。日本円で200円程度。 周りの人に聞くと「キズライ」というのが街の中心らしく、これまた 新しく綺麗で静かな地下鉄に乗って、その「キズライ」というところに到着した。 「キズライ」という名前の割には、案外「キヤスイ」なあなどとくだらない事を 考えた。

 キズライは地下鉄の乗換駅らしく、ここもまた巨大だった。巨大な駅というのも 困ってしまう。出口一つ間違うと、全然違うところに出てしまう。ただ、 巨大な駅の利点というのもあって、駅の中にインフォメーションがあるのを発見した。といってもここでも地図は置いていない。さらにホテルを探している というと、困った顔をされて他の人に相談しはじめた。結局ここからしばらく 歩いたところにホテルがあるはずだから、そこに行ってみてはといわれ、僕は 重たい荷物を担いで右往左往する羽目になった。

 キズライはショッピング街のようで、高級そうなブティックやらおしゃれなオープン カフェやらが沢山群れている。街の人もいままでよりずっとおしゃれだ。こういう 都会にもかかわらず、人々はとても親切で、僕がホテルを探しているというとみんな 親切に教えてくれた。ようやく一軒の宿に辿り着く。高級そうだがこれで 良い。何でもよいからまずホテルに入り、値段を聞いて、部屋を確認する。 そこでその街のホテルの値段を大体把握し、他のホテルを紹介してもらう。 この時入ったホテルは80ドルくらいと、とてもじゃないが泊まれるレベルでは なかったが、僕が正直に自分の予算をいうと、「それだったらXXXというエリア に行ってみると良い」と行き方を親切に教えてくれた。

 


人々はせわしない


 バスでそのXXXというエリアに行くと、なるほど沢山の中級以下のホテルが 軒を連ねている。このXXXという名前を忘れてしまったので、なおさら 自分の今いるエリアがわからなくて困っているのだが、とにかくここで いくつか周ったなかでそれなりのレベルでそれなりの値段の宿に落ち着く事になった。 早く地図を手に入れて、自分がどこにいるのかを把握したいものだ。