カッパドキアは過ごしやすい街だ。気候も良いし、もちろん景色も好い。観光 都市だけに観光客にとって必要なものは大抵そろっている。僕が滞在した ギョレメの村は人口2000人くらいの本当に小さな村だった。

村人のすべてが 観光産業に従事しているといっても過言ではないだろう。多くの人が英語を 流暢に話し、また日本語を話す人だっている。ずっとお世話になっていたツアー会社の ボスの息子は13歳で、彼も将来は旅行関係で働くんだと夢を語ってくれた。 彼は前髪だけを長く伸ばし、そこだけ髪の色を変えている。それが おしゃれなんだそうだ。

インターネットカフェもあった。出向いてみたが、何故かうまくいかない。 トルコ国内のサイトにはつながるのだが、海外の分が全部駄目だった。 理由は分からないけど、この3日間ずっとだめなんだと教えてくれた。ここの 奴等も愉快で楽しい奴等だった。

今日は一日街をふらふらして過ごそうと思って いたので、このインターネットカフェの18歳の少年や、ツアー会社の ガイド、ラマザンを捕まえて、一日中他愛の無い話しで盛り上がった。  このインターネットカフェの少年は将来エンジニアになりたいんだと言っていた。

 

今日、唯一観光したのは、近くにあるオープンエアミュージアムというところだった。 ギョレメの村から1キロほどの距離がある。日差しは強いが乾燥しているので 歩いていてもそんなに苦にはならない。ミュージアムの入場料は1200000TL。4.5ドル 。実は彼は僕を学生だと思って学生の切符700000TLのを渡そう としたのだが、僕がきっちり1200000TL払ったものだから、「ありゃ、あんた 学生じゃあないのかい」と言って学生用の切符を引っ込められてしまった。 ちょっと残念だが仕方が無い。

 このオープンエアミュージアム、実はあまり大した物でもなかった。ここは フレスコ画と言う、洞窟の内側に描かれたキリスト教関係の宗教画が有名な はずなのだが、どれも破損状態が激しく、あまり良く見えない。それに団体客 がひっきりなしに出入りしていて、あまり落ち着く事もできない。最も、その 団体客のガイドの説明をただ聞き出来るという特典はあったことはあったのだが、 話し自体も大した物じゃなかった。

 これを見たらもう帰ろうと思って一つの洞窟に入ろうとすると、そこで係員に 呼び止められる。何でもここだけ別料金。別料金というからには きっと何か良い事があるのだろうと思い、料金を聞いたのだが、なんと料金は 1500000TL。ここの入場料よりも高いではないか。何かの間違いかと思い、チケットを 確認するも、そこにもしっかりと1500000TLと書いてある。ずいぶん迷ったのだが、 ここまで来て中を見ない手は無いと思い、大枚をはたくことにした。そして これがまた大当たりだった。

 この洞窟教会の壁画は今迄このエリアで見たどの壁画よりも圧巻だった。 まるで昨日描いたんじゃないだろうかという程の色鮮やかな壁画が天井から 壁からすべてを覆っている。なんでもこの壁画は11世紀のものなのだそうだ。 あまり広いとは言えないこの教会の中には僕一人しかいない。追加料金がかかるため、団体客はここにはまず来ないし、個人の客もその料金を聞いて 皆退散していた。だから、一人でのんびりと気分に浸れる。聖書にはなじみが ないので、その壁画がいったい何を意味するものなのかはわからなかったが、 そんな知識無しでも十分に楽しめる。追加入場料がこのミュージアムの入場料 よりも高いのもうなずける。それほど素晴らしいものだった。ところどころ壁が 破損していたのだが、その破損部分が壁画の人達の目の部分に集中している。 係員にその理由を尋ねてもわからなかったが、きっと何か意味があるのに違いない。

 ミュージアムの売店の兄ちゃんたちとしばらく話しをした後、また ギョレメに帰ってくる。ツアー会社でお茶やジュースをご馳走になって、また いろいろな話しに華を咲かせたり、インターネットカフェを覗いたりしている うちにあっという間に夜が更けてしまった。快適なこの街とも明日別れを 告げなくてはならない。