周期的に旅の疲労というのがやってくる。1年と1ヶ月も一人で旅を続けていると、 ある意味そうなるのが当然なのだろう。特に孤独な期間が長く続いたり、ボラれたり することが続くとその疲労は極限に達する。そんな兆候が出始めていた。更に 暑さやら蚊やらでほとんど熟睡できていないので、それも影響しているのだろう。 「帰りたい」とか「旅を止めたい」とは思わないが、なにか「つまらない」のだ。 心からワクワクする、あの感覚が湧いてこないのだ。毎日が惰性で流れて行く、 そんな気がする。  

 もちろんそれなりの観光名所に居る訳で、観光自体は楽しいし、現地の人との コミュニケーションだっておもしろい。特にこの地域は一度来ようとして挫折した 場所でもある。その時に仕入れておいた知識もある。でも、「行かなくちゃ」と 自分を奮い立たせないと、ホテルの外にも出る事ができない。まあ これは半分以上暑さのせいでもあるのだが、それでも特にここ2~3日の僕は そんな状況だった。

 だから、今日はとにかく休んだ。良いホテルに泊り、心身ともに疲労を回復 させるのに努めた。疲労の一番の解消方法は同じ日本人のバックパッカーと 会って、お互いにビールでもかたむけながら旅の話で盛り上がることなのだが、 それがかなわない場合、 単純な話だが、僕の場合ある程度の高級ホテルに宿泊して 部屋でのんびりする事でこの「旅の疲労」というのがほとんど解消出来てしまう 。思えばインドでも中国でも僕は要所要所でそれなりのところに泊っている。 けれども最近はある意味中途半端な所ばかりを泊まり歩いていた。だから 昨日は「きちん」としたホテルに泊る事にしたのだ。何よりも大事な事に エアコンが効いている。それだけでもかなり疲れが取れるのだ。 そして、綺麗で広い部屋は僕の疲れた精神を癒してくれる。冷蔵庫を開ければ いつでも冷えたビールが飲める。そう考えるだけでうれしくなる。

 午前中、街をふらついたり、市場を巡ったりしたが(なんだかんだ言って、 それでもやっぱり街に出ていってしまう)、それ以外は部屋で手紙を書いたり、 本を読んだりしてのんびりと過ごした。そして、そのお陰だろうか、また 活力が沸いてくるのがわかった。

 


ウズベキスタンの広場


 夕刻になんだか本当に活力が沸いてきてしまって、居ても立ってもいられなくなり、 かといってこれからどこかに行く訳にもいかず、しょうがないのでホテルの周り を散歩した。昨日の雨のお陰だろうか、あたりの空気は久々に柔らかく、涼しささえ 感じられる事ができた。公園をうろつくと、ちょうど噴水のある人工の池から水を ポンプでくみ上げてそれを花壇にまくところだった。ここ数日の熱波のためだろう、 花壇はカチカチに干上がっていて、草花がほとんど悲鳴を上げそうな状態だった。 その乾いた土が、水のお陰でみるみるこげ茶色の生命力のある土壌に姿を変えていった。

 たまたま遭遇したその光景を見て僕はなんだかおかしくなってしまった。あの 花壇はまるっきり今日の僕そのものではないか。エネルギーの充電は済んだ。 明日草花が元気を回復しているように、僕もまた頑張って行こう。