昨日ホテルのビジネスセンターで「インターネット」の情報を仕入れると、 そもそもインターネットとは何かを知らない世界だった。けれどもそこから ダイヤル直通の国際電話がかけられるという。それだったら、自分のコンピュータ から直接日本に電話するというのも手かもしれない。そう思い、更新の準備を すっかり整えて、ビジネスセンターにむかう。コンピュータから電話をするのだ という説明をするのにとても時間がかかったが、ようやく承諾してくれる。 一分260ソム。公定レートで3ドル強、僕のレートで2ドル弱だ。ところが 回線状態はさっぱりだった。データ通信音まではなんとか行くのだが、 ログインできるところまではいかない。6回試してあきらめた。ただただ2000ソム が消えていった。

 せっかく準備したのに、更新できないのは悔しい。それにアルマティ、ビシケクで インターネットが出来るところがあったのに、それよりも大きな都市である タシケントにその施設が無いなんてことは信じられない。そこで、この街で一番の 高級ホテルであるインターコンチネンタルに行ってみる事にした。うまくいけば そこのビジネスセンターを使わせてくれるかもしれないし、もし駄目でも インターネットできる場所を教えてくれるだろう。タクシーを値切って100で 到着したインターコンチは僕の予想に違わず、フロントの人がとても親切だった。 残念ながらホテルにはその施設は無いのだが、インターネットを出来る場所を 教えてもらえる。それは地下鉄のプーシキン駅の側で、「だいたいこの辺よ」と 地図で指差してくれた。

 ホテルの人がタクシーを捕まえるとそこまで300だと言われたが、それを 断って路上で捕まえると150だった。まあそんなものだろう。ホテルの人が 教えてくれた場所はすぐに見つかった。プーシキンの駅のすぐ先に鉄道と道路の アンダーパスがあるのだが、そのアンダーパスを越えてすぐ右側の建物だ。 一時間800ソムだという。僕のレートで5ドル強である。これなら問題無い。 そこはインターネットカフェというよりも、どちらかというとプロバイダーそのもの のようだった。 ここでは僕のメールアカウントにアクセスして、メールをダウンロードしてくる こともできた。もちろん英語システムなので、一度フロッピーに落として、 それをもう一度僕のコンピュータにコピーして読まなくてはいけないと、 なかなか面倒なプロセスを経ないといけないのだが、それでもメールを読めるのは とてもうれしい。

 また沢山のメールが入っていた。とても勇気づけられる。今回は旅で知り合った 人からのメールが目立った。たとえばネーパールで会った「インド帰りの青年」や バラナシで会った「ボクサー」などからだ。「ボクサー」はバラナシで写真を一杯 とっていた。そしてそれが銀座で開かれたコンテストでかなり良い線までいったのだ そうである。そんな話を聞くととてもうれしくなる。この二人は友人のメールアカウント を通じてメールをくれた。彼らに会ったのはもうかなり前の事だったので、まだ 僕のことを覚えていてくれて、さらにこんなに長いHPのアドレスを覚えてもらって いて、わざわざ友人のところからアクセスしてくれたというのがとてもうれしかった。

 「古本氏」からも届いていた。カシュガルで会った「濃い顔の二人」のうちの 一人である。「ばなな氏」からも先日メールを頂いている。彼らは問題無く ウルムチで上海行きの列車の切符を取得するのに成功し、順調に帰国出来たのだそうだ。 「古本氏」は僕の付けた仇名にずっこけていた。僕は旅行中に出会った日本人に関しては すべて仇名を付けることにしている。本名を出す事によってなにか不都合が生じるのを 恐れてのことなのだが、この仇名を付けるというのがいつも大変だ。前出の 「ボクサー」や「ばなな氏」はあっさり決まったのだが、「古本氏」はけっこう 苦労したなかの一人だ。

 そんな僕が付けた仇名をとても気に入ってくれている(?)うちの一人が 「お祭り兄ちゃん」だ。彼は自ら「お祭り兄ちゃん」ですと 名乗ってくれている。こんな方がいると、仇名の付け甲斐も あるというものだ。彼はとても頻繁にメールをくれるので、彼自身やその時 一緒だった旅行仲間(りかちゃん、ジョージ、植田さん、料理長、ミホちゃん、 野人くんなど)の情報も逐一入ってくる。「お祭り兄ちゃん」からは アフガニスタンの地震やエリトリア・エチオピア情報、それにサッカーのカズが全日本から 外された情報などを教えてもらった。昨日僕がトルクメニスタン大使館で ビザの発給を待っている時に、警官と話をしていて、僕が日本人だというと 彼にすぐに「カズヨシ ミウラ ハラショー(良い)」などと言われたばかり だったので、このニュースにはとても驚いた。

 久しぶりに「植田さん」からも届いていた。彼は12月の末に日本を飛び出した っきり音信が不通になっていて、ちょっと心配していたのだが、6月13日にようやく 帰国したのだそうだ。インドシナ半島をゆっくり回ってきたらしい。彼は確か30半ば だったはずだ。(後半だったっけ?)なかなか世の中をナメテいらっしゃる。

 最近の知り合いではバネッサからも連絡が入っていた。キルギスの田舎の 村で1ヶ月ほど過ごして今はアルマティに戻っているらしい。イシククルの 近くだと言っていたが、毒物事件は大丈夫だったのだろうか。

 それ以外にもいつもメールをくれる何人かから(バースデイケーキを送ってくれた 人もいた)も入っていたし、元の会社の後輩から飲み会のお誘いのメールも入っていた。 笑い話を送ってくれる大学時代の友人もいて、なかなか娯楽には事欠かない。 メールを読み終わると、「あれ、ここどこだっけ、そういえば今は旅をしてるんだよなあ」と いつも思ってしまう。それほど日本が近い。

 プロバイダーにコンピュータを忘れて、慌てて 取りに戻るというハプニングが在ったが、(なんとホテルに戻るまで気が付かなかった。 それほどリブレットは軽いのだ)プロバイダーに戻ると無事にコンピュータが 見つかった。

 日中はそんなこんなであっという間に過ぎていったのだが、今日のハイライトは なんてったってバレエだ。バレエは「芸術」ではなくて「娯楽」なんだということが わかった一日だった。演目もよかったのかもしれない。今日の出し物は「 アラビアンナイト・千夜一夜物語」だった。シェエラザード姫が嫉妬深い王に 殺されないために毎夜物語を語ったという話で、筋はとてもわかりやすい。 シェエラザードが語った話は、今日のバレエには三つ含まれていて、 それぞれ「シンドバット」「アラジン」「アリババ」とこれもなかなかポピュラー な話だ。結局物語りはハッピーエンドに終わるのだが、途中会場で 手拍子がおきたり、難しいテクニックを披露した時には自然に拍手が沸いたりと とても盛り上がった。

 


ナボイ劇場

劇場の内部


 昨日のオペラはガラガラで、会場の1割くらいしか客が埋まっていないという 状態だったが、(昨日はその客の少なさにこの劇場あるいはオペラ団の経営状態を 心配してしまい、まともに劇に熱中できなかった)今日はほぼ満席だった。にも かかわらず、僕は前から3列めの真ん中辺と絶好の席を獲得したものだから、 バレエの臨場感もかなり伝わってくる。シンドバッドが敵と闘っている時には、 僕も心の中で「がんばれ、シンドバット」と応援してしまったし、アリババの 妻と盗賊の首領の掛け合いのシーンでは、そのしぐさがおかしくて声を上げて笑って しまった。今日のバレエは「芸術鑑賞」なんて代物では無く、心底「楽しめる」 娯楽だった。それでいいのだ、それこそがバレエなのだと悟った。料金は 500ソムだった。(他に400と300の席もあった)