同室の酔っ払い兄ちゃんはもう本当にどうしようもない。今朝も朝っぱらから、 何を考えたのかウォッカを買ってきて飲みはじめる。そして僕にも勧めてくる。 もちろん、朝っぱらから酒を飲むと今日一日が台無しになるのは目に見えていたので、 きっちり断る。今日はイラン大使館に行こうと思っているのだ。

 イランのビザを取るのは結構面倒くさいときいていた。とても高い上に時間が かかり、更になかなか発行してくれないというのだ。けれどもここキルギスは 結構な穴場かもしれない。そんな気がしていた。昨日のカザフスタン大使館の例 もある。あまり各国が大使館を出していないこの国なので、果たしてイラン大使館 はあるのだろうかと思っていたが、昨日会ったパキスタン人によると、僕の ホテルからそれほど遠くないところにあるのだそうだ。確かにホテルから 徒歩15分ほどのところにイランの国旗を掲げた建物があった。

 この建物は結構無防備で、警備員も簡単に建物の中に入れてくれる。中では イラン人同志がなにか話をしていたので、そこに座ってしばらく待った。 10分ほどして、僕の番が回ってくる。するとツーリストビザを取るには ビシケクの旅行会社に行って、ホテルなどの予約をすっかりとってからでないと 申請できない事、さらにイランに行ったあと、 またここキルギスタンに戻って来なくてはいけないこと などを教えてもらう。僕がそのままトルコに抜けるつもりであることを 伝えると、それならトランジットビザという手があるのだが、これは イランに5日間しか滞在できないのだが、それでも良ければここで5ドルで 発行してくれるということを聞いた。写真が3枚必要。所要7日なのだそうだ。 つまり来週の水曜日まで待たなくてはいけない。

 そこで、なんとか月曜日に発行できないかということをきいて、もし月曜に 発行できるのであればここで申請したい旨を伝えた。パスポートはあずける 必要が無い。だから明日カザフに行くにしても、ここで申請しておくのには 全く問題無いのだ。それにどちらにしてもまたビシケクには戻ってこなくてはいけなの だから、逆にここで申請しておくべきだろう。そうすると、いろんな係官が出てきて いろいろ議論してくれて、最終的に月曜日に発行してくれる旨を約束してくれた。 申請用紙のにはなんでこんな細かい事まで聞くんだろうというほどの沢山の 質問項目があったが、正直に全部記入して、大使館を後にした。

 その後、今度はまた美術館にむかう。ここは「アート系」だ。絵画なり 彫刻なりが置いて在る。絵画はキルギス人の生活が描かれているところは なかなか良かったが、宗教画のところはなんだか暗すぎてあまりおもしろく なかった。宗教画はあまり好きではない。面白かったのは、入場料 3ソムの他に10ソム払って入った特別展示のところに日本の浮世絵が 沢山飾られていた事だ。なんでも日本の美術館からの寄贈なのだそうだ。 中央アジアの小国で見る日本の浮世絵というミスマッチがなんだか良かった。

 アメリカ大使館にも行ってみた。今回アメリカに行くかどうかは まだわからないのだが、行くとなったらきっとアメリカを出る航空券 無しでの入国になるだろう。そうなると日本人であってもビザがいるはずだ。 そう思い、大使館できいてみたのだ。けれども係員の人は「日本人は 90日以内の滞在であればビザはいらないこと」それから「ここの大使館は キルギス人の為の大使館なので、日本人である僕が申請すると、ビザ取得までに 膨大な時間と手間がかかること」を教えてくれた。つまりここで申請するのは 止めてくれということだ。

 夜は「先生」の家に招待してもらっていた。「先生」とボーイフレンドの 他にも何人かの人が招かれていた、久々にカレーをご馳走になり、 また楽しい夜を過ごす事ができた。