ただ、なんとなく手に取ってみた。
そんな一冊。

「何ということもない話。
大したことは起こらない。
登場人物それぞれにそれなりに傷はある。
しかし彼らはただ人生を眺めているだけ。」

吉本ばななさんが、「あとがき」にそう書いておられるような、そんな小説でした。
でも、さりげない言葉使いに「深み」と「癒し」がありました。

いつもと違う街角で、登場人物たちの悲しみが小さな幸せに変わるまで。そんな物語が6編。

「こんなに長くいっしょにいるのは、もう愛と言っても過言ではない。性ではなくても愛だ。ぎゅっとつかんだり概念を論じ始めたら消えてしまうもの。」

「なんとかなる。悲観でも楽観でもない。目盛りはいつもなるべく真ん中に。なるべく光と水にさらされて。情けは決して捨てず。」

ありがとうございました。
のり