「ボクは雪山中毒なんですよ。宗教や神様には無関心なんですけどね。雪山でテントを張って寝て起きてからの、雪山がオレンジから徐々に赤に染まっていく様を見た時、この世には神がいるんじゃないかって思ってしまいます。」
そう熱弁していた爺さんもボクも寝過ごしてしまい、朝方のモルゲンロードを見過ごしてしまった。
05:24 白崩避難小屋
で…
昨日、断念した雪山にやってきた。
神様の言ったとおりだった。
緩やかな傾斜でめっちゃ登りやすい。
少し登るとトレースも出てきた。
これならいけるぞ!!
と思いながら最初の峠を登り切ると…
なんなんだあれは⁉️
めっちゃ尖ってるし、両方切れてるし、長いぞ…
マジか…\(//∇//)\
このナイフリッジをノーアイゼンって、あの爺さん狂っとるやないか〜い。
でもまぁ…ここまで来たら行くしかないのだ。
刃の切っ先についた一直線のトレースにゆっくりと左足を踏み下ろした。
ふ〜!
なんとか越えたぞ。
全身からアドレナリンが吹き出た気がする。
それからはただ黙々と突き進んだ。
この程度の斜面ならもうなんとも思わない。
絶景を楽しむ余裕もなく、足元だけを見てただひたすらジャンクションピークを目指した。
そして更なるナイフリッジを越えると…
着いた〜‼️
07:56 ジャンクションピーク
ちゃんと生きてる。
ていうかそれほど大袈裟な山道でもなかった気もしてきた。
足元には小さな高山植物が見える。
なんて場所に咲てんねん。
で…
標高2000mで圧巻の大雪原に着いた。
ここが神様がボクに見せたかった景色で送ってくれた写真の場所だ。
本当はここでの雪上テント泊を強くオススメされたんだけど流石にそれは丁重にお断りした。
08:35 朝日岳
ここまで来ると残る難関は白髪門からのくだりだけだ。
で…
笠ヶ岳までくると何人かのハイカーと出会った。
その度に危険箇所についてヒアリングしてみる。
答は人によってまちまちだった。
「特にないですよ」「トラバースがこわかった」「くだりたいとは思わないかな」「雪も解けてきてるし全然大丈夫」etc
まぁ…
これだけ人がいること自体がなによりもの安心材料なのだ。
そんなボクに猛烈に緊急サイレンを鳴らすのが神様だったりする。
白髪門の下に赤丸がついた地図が送られてきた。
『この辺に岩場があるので絶対に気をつけください』
で…
遂にやってきた。
鬼門なるか?
11:21 白髪門
神様の忠告通り…
雪から岩に垂直に切り替わる場面がきて、どうやって岩に取り付いたらいいのかわからなくて、4足歩行で這いつくばりながら岩に飛びつき、なんとかクリアできた。
暫くすると雪がない普通の山道となり、激くだりが続く。
いつも縦走の度に思うことだけど、結局最後のくだりが1番キツいのである。
神様に電話してみる。
「体調はどんな感じ?」
「相変わらず良くないよ」
「また写真送るわ」
「バーチャル登山楽しみだ」
「多分、忘れてると思うけど…」
「???」
14:16 土合駅
あの爺さんみたいに巻機山からやってきて、余裕ぶっこいてノーアイゼンで下ってたら、足を滑らせてしまいザックカバーが潤滑油となり、あっという間に滑り落ちてしまったらしい。
30mほど滑ったところにあったクレパスにハマって助かったみたい。
神様の山人生で最大の苦い思い出らしい。
そんなコースをボクにススメルなんて…
「殺す気か💢」