2年前の夏にボクは北海道で大雪山を旅した。
アイヌ語でカムイミンタラ"神さまの遊ぶ庭'と呼ばれる自然が創り出した奇跡の絶景の中を、燦々と降りそそぐ太陽の光を浴びつつダラダラと汗をかきながら大雪渓の上を歩いたのが懐かしい。

ボクはそこで出会った友人達のことを神様だと思うようにしてる。なぜなら人の姿をした神様がひょっこりとやってくるのがその場所らしいから。

その旅で出会った後にまた一緒にどこかの山に登った神様もいれば、連絡はとってるけれど一度も会ったことのない神様もいる。どちらかというと後者の方が多いかな。

で…この2月のこと、その一度もあってない神様になぜか連絡をしてみた。
『元気ですか〜‼️用もないのに朝からLINEしてみました』
直ぐに新潟県のとてつもない雪景色の画像が送られてきた。
『元気ですよ〜でも大雪で車が動かない。遅刻だ〜』

そして一ヶ月後の3月のとある日…
今度は神様から連絡がやってきた。
『のらさん‼️今シーズンこそ一緒に山に登りましょうよ』
『わかりましたよ。オススメの山に連れて行ってくださいな。只今、コロナに感染して体調ボロボロなんだけどね』
『実は私も今入院中なんだ』
『え…どうしたの?』

『癌になっちゃった。ちょっと検査を先延ばしにしてたら結構ステージがすすんじゃってね。』

ボクは言葉を失い頭の中が真っ白になった。
『でも心配しなくていいよ。治る気しかしないから。だから約束しよう。今シーズンこそ一緒に登ろう。ジャンダルムの天使なんてどうかな。のらさんまだ見てないよね』
むむむ…ジャンダルムの天使なんて日本で最も危険な天使なので一生出会わないはずだったのに。
『いいよ。どこでも行くから癌に負けるなよ』
『は〜い。任せてください。あっ。ゴールデンウィークはどこに登るの?』
『奥秩父行のバスをとったから、雲取山、甲武信ヶ岳、金峰山、瑞牆山を縦走するつもり』
『それもいいけどね谷川連峰なんていかがですか?まだ桜が咲いてるし、半分くらい雪が溶けてゼブラ模様になるので激推ししますよ。私は登れないので登って欲しいな』
そして何枚かの写真が送られてきたのだ。





めっちゃ綺麗じゃないか。
谷川連峰か…行ってやるよ。
ボクは奥秩父行のバスをキャンセルした。

ということで、癌を患った神様からの言葉は、お願いの域を超えて"お告げ"としてボクの耳にたどり着いたのである。