いつかのラブソング | 天狗と河童の妖怪漫才

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妖怪芸人「天狗と河童」の会話を覗いてみて下さい。
笑える下ネタ満載……の筈です。

職場にいる25歳の後輩からカラオケに誘われたのである。




そいつは陽キャなので年上を誘うことに抵抗がないのかもしれないけど、僕が25歳の頃には41歳のおっさんをカラオケに誘う感覚はなかったと思う。




そもそもなぜ僕をカラオケに誘う話になったかと言うと、彼と一緒に仕事をしながらお互いに鼻歌の奪い合いという流れがあったのだ。




真面目に仕事の話をしている途中のワードから何かしらの歌の歌詞に繋げて歌うという攻撃側と、そのフレーズの続きを歌う守備側の攻防になる。




例えば陽キャが脚立に登って作業をしていてうっかりシャーペン式の鉛筆を落としてしまい、下にいる僕がそれを拾うわけだが、陽キャは鉛筆の芯が折れてないか心配して聞いてくるので、「大丈夫だよ、折れてないよ」と。



僕「鉛筆の芯はダイヤモンドと同じだからな」



陽キャ「ダイヤモンドすか?」



僕「ダイアモンドだね~♪」



陽キャ「あーあーいくつかの場面~♪」




もしかしたらこれもパワハラなのかもしれないけどね(笑)



それで僕がコロナ禍になってからカラオケに行ってないって話になり、陽キャは高校時代からの友達である陰キャと最近カラオケに行ってきましたよと。




陰キャくんがカラオケに行くのは意外だったのと陽キャが言うには陰キャくんは歌うのが好きだというのだ。




「いや、あいつ結構カラオケ行きますよ。そうっすね、確かに○○さん(僕)の前では歌ったりする姿をあんま見せてないかもしれないっすね」




いや、仕事中だから普通はそれが正解なんだけどさ。




それで一緒にカラオケ行きましょうよ!と。




僕としては全然ありなんだけど、果たして大丈夫なのか?と不安にもなる。



仕事とプライベートを区別するプロ意識とかではなく、41歳という自覚というか世間一般の41歳として大丈夫なのか?という心配である。




僕としては25歳から休日は日曜日しかない建設業界で生きてきたので精神年齢はあの頃のまま止まっている。




元カノからの束縛で友達を失ったのもある。




ひたすらに働きながら“いつか”を夢見たり、同世代の普通さえもわからなくなっていた。




20歳の前後には夏は海に行ったり冬はスノボしたり、会社の同期とカラオケに行ったりと。





そういった日々がずっと続くと思っていた。




同世代と同じようにそれなりの年齢で結婚していつか家庭を持つのだろうと。




もう一人の自分をどこか別のところに置いてきたようだった。




ディズニーランドに行ったり、バーベキューしたり、友人の結婚式に行ったり、遠いところに旅行したり。




そういう経験をせず、ひたすら働く日々だった。




その結果こんな仕上がりになってしまった。




建設業の職人は遊んでいるように見えて案外そうでもない。




肉体労働で週6で働き日曜日はひたすら眠ることになる。




そうでなくとも残業や徹夜、1ヶ月休み無しとか、正月も2日から仕事とかね。




そんで怪我や死ぬリスクを背負って働いているわけですよ。




職場は男ばっかりの永遠の男子校ノリですからね。





ラブソングも“いつか”の誰かに歌っているわけですよ。




抱き合う度にほら~♪

欲張りになって行く~♪