言葉の選び方 | 天狗と河童の妖怪漫才

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妖怪芸人「天狗と河童」の会話を覗いてみて下さい。
笑える下ネタ満載……の筈です。

言葉を選んで相手に気持ちを伝える。



これが難しい。



何が難しいって、これは送信と受信で双方向のチューニングが合っていないと正しく伝わらないのよね。



イカれた彼女から急にメールが送られてきましてね。



前に自宅で飼ってたペットの犬を思い出して悲しいと。



2年前くらいですかね、僕の実家の婆ちゃんが亡くなったのと同じくらいのタイミングで、イカれた彼女の実家の犬も死んじゃったんですよ。



こういう時って、お互いに励まし合うのってなかなか難しいんですよね。



イカれたやつは長女ですから自分の感情を抑えて気丈に振る舞う訓練を積んでるとは思うんですけど、やっぱ家族以外にはそれを吐き出したいわけじゃないですか。



でも僕は次男坊なんで、自分の悲しみを優先させてしまいがちなんで、イカれたやつの死んじゃった犬に対する悲しみに彼氏としては慰めの言葉を掛けてあげるわけだけど、それが全部自分の婆ちゃんにもあてはまるから複雑な気持ちになるのよ。



たぶんそれが長男長女の視点なのかもしれないけどね。



まぁそれから月日は流れましたけどね。



ペットの遺骨をお守りにするサービスがあるらしくて、イカれたやつはそれを持ち歩いてるわけです。



そのようなサービスがあることも僕は知りませんでしたし、そのペットの遺骨でお守りを作るって時にはイカれたやつからメールが来まして、僕の分のお守りも欲しいかと聞かれましたけど丁重にお断りしましたけどね。



そのお守りも僕は見たくないんですね。



そういうの恐いんですよ。



で、僕が恐がれば恐がるほど見せようとしてくるわけでね。



ずっと目をとじたまま見ませんでしたけどね。



イカれたやつも名古屋で初めて一人暮らしを経験してますから、寂しさとか孤独感とか色々な感情を学習してる最中だとは思うんですよ。



それで急にメールが来たわけですよ。



満月満月満月満月おもいだしてかなしくなった」と。



その理由は僕にはわからないじゃないですか。



例えば、テレビを観ててその内容で犬を思い出して悲しくなったとかね。



イカれたやつの送信する悲しみと、僕の受信する悲しみが、同じ悲しみなのかどうかですよね。



ペットを失う悲しみは理解できるし、その悲しみに共感はできるけど、その“かなしい”は“悲しい”とは違うのだろうか?と。



つまり、僕が受信できるボキャブラリーと僕の感情のボキャブラリーが、自分でも何を言ってるのか迷子ですけど(笑)



ようするに、メールで伝える言葉でいうと、誤変換ってあるじゃないですか、変換ミスとか入力ミスみたいなことね。



それと似たようなことで、感情を相手に伝えるときに手に触れた言葉が“かなしい”であった場合に、僕には、それは僕の中にある“かなしい”と同調するのかどうかのチューニングをするわけですよね。



“おもいだしてかなしい”は僕の中にはない、その思い出に僕は触れることはできない。



だけど、そういうことはあるじゃないですか。



コンビニの陳列棚とかさ、たくさん並んだカップ麺の前でとか、急に思い出すときとかあるじゃないですか。



そういう過去の優しさがフラッシュバックする時ってあるからね。



なんでかわからんけど後悔したりとかさ。



人生の経験値が感情のチューニングのチャンネル数だと思うんですよ。



それでもね、優しい人は周波数が違ってても許してくれるじゃないですか。



イカれたやつの場合はチューニングが合ってないと怒るんですね。



そういう雑な男が大嫌いなんでしょうね。



こうなると僕の中では感情のチューニングを1から、受信設定からやり直さないといけないわけですよ。



恐いから、怒ると恐いから、爆弾処理班の如く震える指先でチューニングをするわけですよ。



かなしくなった理由がわからないからね。



とりあえず話を聞こうと。



そしたらメールの返信が来ましてね。



「肌寒くなったからかな」と。



なるほどな、と。



寒い夜に、女は一人になると、詩人になるんでしょうね。



こういう感性は男にはないからね。



僕なんか“オナニー”と“お笑い”の二本柱だけで寒い夜を乗り越えてきましたからね(笑)



“肌寒くなったからかな”と。



これで着払いで毛布を送り付けたら怒られるわけですよ。



女が求めてるのはそういうことじゃないんですよね。



でもね、男も一生懸命なんですよ。



それだけは分かって欲しいですね。



昔ね、イカれたやつから急にメールが来ましてね。



コアラのマーチが食べたいと。



で、電話を1時間くらい乗り継いでイカれたやつの実家までコアラのマーチを届けたことあったんですよ。



サプライズですよね、玄関の前にコアラのマーチを置いてさ。



キモいって言われましたよね(笑)



冷静に考えたら、そこまでコアラのマーチが食べたい時なんてないからね(笑)



それでもわざわざ実家まで行ってますから、部屋に上げてくれるかと思ったら、外に出てくることもなく、そのまま僕は帰宅したんですよ。



警察呼ぶからな言われてね(笑)



男の考えるサプライズ案ってのは、どうも女からすると間違ってるらしいのね。



男と女のチューニングってのは難しいって話でした。



アスタ

ビスタ
ベイビー♪