
柳田ヒロ
HIRO(1972)
日本のロック黎明期に欠かすことのできない演奏家でもある柳田ヒロのソロ3作目。
クラシカルなキーボード・プレイとハードなインプロヴィゼイションを期待していると、肩すかしを食らってしまうが、フォークやポップスに留まらず、サンバなども取り入れたユニークな作品になっている。また本人による歌唱もあり、作詞は全て松本隆によるもの。
実に鮮やかな作品である。これまでの熱気が充満するようなハードさの魅力も捨て難いが、この作品に見られるような、後のシティ・ポップなんかにも繋がっていきそうな、卓越した先見性にもたまらない魅力がある。音楽性の違う様々なセッションを経て養われたであろう彼の音楽性が、ポップスという枠のなかに色濃く出ているのがこのアルバムといえそうだ。
インストの曲を挟みつつ、軽快なドラムや爽やかなフルート、ちょっと気取ったコーラスなんかが彩りを添える、ソフト・ロックとも言えるようなヴォーカル作品。当初は違和感があったものだけど、聴けば聴くほど味わい深いものに変わっていく。また10分を超える最後のインスト曲は、これ以前の作品に近いハードさを持たせた、豪勢なブラス・ロックに仕上がっていて、これも面白い曲だ。
ここに収録されている「乱れ髪」は、大瀧詠一の「乱れ髪」と同じ詞である(もちろん曲は違います)。大瀧だけに渡すはずが、松本の奥さんが誤って柳田にも渡してしまったそうである。松本はそのことで大瀧にはひどく怒られたそうだ。