単独過半数の議席を持つ会派が無くなり, 選挙前よりも住民の要望に対して敏感になった岐阜市議会.
2019年3月の岐阜市議会 定例会までは, 定数38の内, 自民党籍の岐阜市議会議員が19人と単独過半数を超えていたため, 請願が採択されたり, 行政が決定した方針が住民の要望によって方針転換するということは殆んど無かった.
■ 岐阜市議会 勢力図(2019年3月定例会)
会派 | 議員数 | 全議席数に占める割合 (%) | 得票数(2015年4月) | 当日有権者数に占める割合 (%) | 与党系 or 野党系 | 備考 |
欠員 | 1 | 2.63 | 2846.016 | 0.87 | 政務活動費問題で辞職した自民党元職の議席 | |
自民岐阜 | 17 | 44.73 | 48096.495 | 14.63 | 与党系 | |
クラブ青空 | 1 | 2.63 | 5093 | 1.55 | 与党系 | 自民党籍 |
無会派 | 1 | 2.63 | 3073 | 0.93 | 与党系 | 自民党籍 |
無会派 | 1 | 2.63 | 2884 | 0.88 | 与党系 | 無所属, 元自民党 |
公明党 | 5 | 13.16 | 17097 | 5.20 | 与党系 | |
市民クラブ | 5 | 13.16 | 14837.986 | 4.51 | 与党系 | 旧民主党系3人+立憲民主党2人 |
無所属クラブ | 4 | 10.53 | 12028.388 | 3.66 | 野党系 | 無所属市民派 |
共産党 | 2 | 5.26 | 5911 | 1.80 | 野党系 | |
無会派 | 1 | 2.63 | 4935 | 1.50 | 野党系 | 無所属, 元共産党 |
落選者の票 | 0 | 0.00 | 15689.110 | 4.77 | 落選者12人 維新の党: 2084票 (0.63%) 民主党: 1282.110票 (0.39%) 共産党: 1865票 (0.57%) |
※ 2015年(平成27年)4月26日 当日有権者数: 328727
※ 2015年(平成27年)4月26日 執行 岐阜市議会議員選挙 投票者数: 132350, 投票率: 40.87 %
※ 岐阜市議会の定数は38, 過半数は19, 議長は最大会派から選出され, 議決には加わらない.
2019年4月21日投票の岐阜市議会議員選挙に於いて, 自民党は現職19人, 元職1人, 合計20人を公認候補とし, 新人1人を推薦候補とした.
結果, 自民党の公認候補の内, 現職14人, 元職1人, 合計15人が当選, 現職4人が落選, 推薦候補1人が落選となり, 無所属で立候補して当選した新人2人を岐阜市議会の最大会派「自民岐阜」に迎えるも, 単独過半数にあと2議席足りない17議席となった.
また, 元自民党の元岐阜県議会議員の無所属元職1人が当選し, 政務活動費問題で話題となった元自民党の無所属現職1人は落選した.
公明党の会派「岐阜市議会公明党」は現職5人が全員当選したことで議席数を維持した.
旧民主党系会派「岐阜市民クラブ」は, 立憲民主党 所属の新人1人と中部電力労働組合 出身の新人1人が当選したことで2議席増加し, 7議席となった.
日本共産党の会派「日本共産党 岐阜市議会議員団」は元職1人が当選したことで1議席増加し, 3議席となった.
なお, 元日本共産党の無所属現職1人も当選した.
無所属市民派の会派「岐阜市議会 無所属クラブ」は現職4人が全員当選したことで議席数を維持した.
■ 岐阜市議会 勢力図(2019年5月~)
会派 | 議員数 | 全議席数に占める割合 (%) | 得票数(2019年4月) | 当日有権者数に占める割合 (%) | 与党系 or 野党系 | 備考 |
自民岐阜 | 17 | 44.74 | 50238.588 | 15.06 | 与党系 | |
無会派 | 1 | 2.63 | 3246 | 0.97 | 与党系 | 無所属, 元自民党, 元岐阜県議会議員 |
公明党 | 5 | 13.16 | 16333 | 4.89 | 与党系 | |
市民クラブ | 7 | 18.42 | 18856.126 | 5.65 | 与党系 | 旧民主党系4議席+立憲民主党3議席 |
無所属クラブ | 4 | 10.53 | 9970.283 | 2.99 | 野党系 | 無所属市民派 |
共産党 | 3 | 7.89 | 7658 | 2.30 | 野党系 | |
にじいろ | 1 | 2.63 | 2713 | 0.81 | 野党系 | 無所属, 元共産党 |
落選者の票 | 0 | 0.00 | 17012 | 5.10 | 落選者14人 自民党公認[4人]: 6788票 (2.03%) 無所属(自民党推薦)[1人]: 1882票 (0.56%) 無所属(元自民党)[1人]: 1409票 (0.42%) 共産党[1人]: 1567票 (0.47%) |
※ 2019年(平成31年)4月21日 当日有権者数: 333674
※ 2019年(平成31年)4月21日 執行 岐阜市議会議員選挙 投票者数: 127687, 投票率: 38.27 %
岐阜市議会議員選挙の前には単独過半数の議席を保有していた自民党は, 選挙によって単独過半数を失い, 岐阜市議会は「ハング・パーラメント」の状態となった.
その結果, 2020年3月の定例会では, 選択的夫婦別姓導入, 民法改正関連の請願が賛成20票, 反対17票で採択され, 2020年9月の定例会では, 既に補正予算案が成立済みだったのにもかかわらず, 行政が入札不調を理由に長良小学校のプールの建設を中止をしようとしたことに住民が反発したことを受け, 「自民岐阜」の市議が「長良小学校プール及び長良公民館建築主体工事」関連の予算修正に関する決議案を提出し, 賛成32票, 反対5票で可決した.
議席数だけを見れば, 選挙後, 自民党籍の市議の議席数はたった3議席減少しただけであるが, これだけ住民の要望に対して敏感になったのは, 最大会派「自民岐阜」が単独過半数割れしたことと, 選挙で自民党公認の現職4人, 自民党推薦の新人1人, 元自民党の無所属現職1人が落選したことが岐阜市議会に緊張感を齎したからだと考えられる.
2019年4月 岐阜市議会議員選挙は, 岐阜市政, 岐阜市議会の民主化への第一歩となった.
しかし, まだ, 「自民岐阜」と元自民党の無所属市議と「岐阜市議会公明党」の議席数の和が23と過半数を超えており, 旧民主党系会派「岐阜市民クラブ」も市政関連の議案や請願については「自民岐阜」, 「岐阜市議会公明党」と同じ投票行動をする場合が殆んどなので, 住民の生活に密着した財政支出を伴うような請願や住民の要望が通るような状況ではない.
次の2023年4月 岐阜市議会議員選挙に於いて, 「自民岐阜」がさらに4議席を失い, 無所属市民派や日本共産党等, 住民に寄り添う市議が4人増加すれば, 「自民岐阜」と元自民党の無所属市議と「岐阜市議会公明党」は過半数割れし, 岐阜市議会はさらに住民の要望に対して敏感になり, 住民の生活に密着した財政支出を伴うような請願や住民の要望が通る可能性が出てくる.
(※ ただし, 日本共産党は党内ガバナンスが「民主集中制」による上意下達で, 中央集権的な政党なので, 地方の委員会は党中央委員会の意向に従わなければならないため, 共同体による自治とは相容れない部分がある. よって, 住民の生の声を市議会で通すためには, 無所属市民派の市議を増やすことに力を入れるのが良い.)
■ 岐阜市議会 民主化が理想的に進んだ場合の未来予想図(2023年5月~)
会派 | 議員数 | 全議席数に占める割合 (%) | 得票数(2023年4月) | 当日有権者数に占める割合 (%) | 与党系 or 野党系 | 備考 |
自民岐阜 | 13 | 34.21 | ||||
無会派 | 1 | 2.63 | 無所属, 元自民党, 元岐阜県議会議員 | |||
公明党 | 5 | 13.16 | ||||
市民クラブ | 7 | 18.42 | ||||
無所属クラブ | 6 | 15.79 | 無所属市民派 | |||
共産党 | 5 | 13.16 | ||||
にじいろ | 1 | 2.63 | 元共産党 | |||
落選者の票 | 0 | 0.00 |
もし, 岐阜市政, 岐阜市議会の民主化をさらに進め, 賢く優しい政治が行われることを望むのであれば, 選挙期間前から住民に寄り添う立候補予定者を支援し, 当選確率を上げることが重要だ.
現職の住民に寄り添う岐阜市議会議員は高齢の方々が多い.
いつまでも, 現職でいて下さる訳ではない.
住民の手で, 良き立候補予定者を作り, 支え, 育てていくということが重要であるし, 住民自身が日々, 賢くなることが重要である.
民主主義は「永久革命」であり, 主権在民のために絶えず運動しなければ機能しない.
住民が不断の努力, 運動を怠れば, 民主化が後退し, また, 最大会派が単独過半数の議席を保有し, 強行採決が横行し, 請願も住民の要望も蹂躙される状態となる.
■ 岐阜市議会 民主化が後退した場合の未来予想図(2023年5月~)
会派 | 議員数 | 全議席数に占める割合 (%) | 得票数(2023年4月) | 当日有権者数に占める割合 (%) | 与党系 or 野党系 | 備考 |
自民岐阜 | 22 | 57.89 | ||||
無会派 | 1 | 2.63 | 無所属, 元自民党, 元岐阜県議会議員 | |||
公明党 | 5 | 13.16 | ||||
市民クラブ | 5 | 13.16 | ||||
無所属クラブ | 2 | 5.26 | 無所属市民派 | |||
共産党 | 2 | 5.26 | ||||
にじいろ | 1 | 2.63 | 元共産党 | |||
落選者の票 | 0 | 0.00 |
下記に, ルソーと丸山眞男の至言を記載するので, 是非, 心に刻んで頂きたい.
イギリスの人民は自由だと思っているが、それは大まちがいだ。
彼らが自由なのは議員を選挙する間だけのことで、議員が選ばれるやいなや、イギリス人民は奴隷となり、無に帰してしまう。
その自由な短い期間に、彼らが自由をどう使っているかを見れば、自由を失うのも当然である。
ジャン=ジャック・ルソー ( フランス / 哲学者 / 1712年6月28日 ~ 1778年7月2日 )
『社会契約論』より
資本主義も社会主義も永久革命ではない。
その中に理念はあるけれども、やはり歴史的制度なんです。
ところが、民主主義だけはギリシャの昔からあり、しかもどんな制度になっても民主主義がこれで終わりということはない。
絶えざる民主化としてしか存在しない。
現在の共産圏の事態を見ても分ります。
それが主権在民ということです。
主権在民と憲法に書いてあるから、もう主権在民は自明だというわけではなく、絶えず主権在民に向けて運動していかなくてはならないという理念が掲げられているだけです。
決して制度化しておしまいということではないんです。
その理念と運動面とを強調していくことがこれからますます大事になって行くと思います。
丸山眞男 ( 日本 / 政治学者 / 1914年3月22日 ~ 1996年8月15日 )
『戦後民主主義の「原点」』pp.66-70 より
本記事を楽しんで頂けた方は, クリックをお願い致します. <( _ _ )>
↓