「物価目標2%達成」は表向きの目標. 真の目標は, 国債買い入れと国債金利上昇抑制による「財政破綻の回避」.
2017年7月20日, 日本銀行の黒田東彦 総裁は, 日本銀行金融政策決定会合後の記者会見にて, 物価目標2%達成の時期を2019年度ごろに先送りしたことを明言した.
[ 情報源: 「日銀 物価目標2%達成を19年度ごろに先送り」/ テレ朝news / 2017年07月20日 / http://news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/000105829.html ]
日本銀行は, 2013年3月の黒田総裁就任以降, 2013年4月に「量的・質的金融緩和」を開始し, 2014年10月に日本国債とETFの買い入れ額を増額する追加緩和を行い, 2016年1月に「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を開始し, 2016年9月に「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を開始した.
いずれも表向きの目標は, 物価目標2%を達成することであったが, 真の目標は, 民間銀行が保有している日本国債を日本銀行が買い入れすることと, 日本国債の金利上昇を抑制することによって財政破綻を回避することである.
黒田総裁は財務官僚出身であり, 財政健全化 (緊縮財政) 推進派である.
2019年から銀行の自己資本比率規制である「BIS規制」が, 「バーゼル2」から「バーゼル3」にバージョンアップし, 民間銀行が日本国債を従来のようには保有できなくなる可能性があるため, あらかじめ民間銀行が保有している日本国債を日本銀行が買い取り, 同時に日本国債の金利上昇を抑制し, 財政破綻を回避し, 政府に緊縮財政を促して財政健全化を推進するというのが黒田総裁のシナリオであると推測する.
すなわち, 黒田総裁や財務省にとっては, 日本国債を守ることが至上命題であり, 国民が重税に苦しもうが, 実質賃金が低迷しようが, 生活必需品の価格の伸びが賃金の伸びを上回ろうが関係無いのである.
総務省統計局が公表している消費者物価指数のデータから, 2013年3月と2017年5月のデータを比較すると, 「衣服及び履物」, 「食料」, 「電気」は既に, 年間2%上昇を達成しており, 「教養娯楽」, 「教育」, 「交通」も年間2%未満ではあるが, 近い水準の上昇をしている.
ちなみに, 高速道路料金は, 32.8%も上昇している.
道路公団が民営化されても, 暴利を貪る利権体質は変わっていないようだ.
実質賃金指数は, 2013年に103.9, 2016年に100.7だった.
2017年の指数が2013年の指数を超えることは, ほぼ有り得ない.
つまり, マクロ的には, 実質賃金は下がったのに, 生活の身近な部分は物価上昇率が高く, 生活は苦しくなったといえる.
ディマンド・プル型の物価上昇ではなく, コスト・プッシュ型の物価上昇が, 庶民生活の最も身近な部分を直撃していることが, 数値によって示された.
現状の金融政策, 財政政策は, 1%の富裕層のために行われている.
「国民のための量的金融緩和」と「国民生活向上のための財政出動」を行うことが必要である.
ただちに, 庶民に対する減税, 最低賃金の大幅引き上げをすべきである.
また, 日本銀行は, 地方銀行から地方自治体の債券, 中小零細企業の債券・債務, 個人の債務を買い入れるべきである.
そうすれば, 地方自治体, 中小零細企業, 個人の債務は実質無くなり, 地方銀行はリスク資産を減らし, 現金を増やすことができるため, 地方経済を活性化し易くすることができる.
表1 2017年5月 品目別価格指数 (全国) (一部抜粋)
品目 | 2013年3月 | 2017年5月 | 差 |
総合 | 95.9 | 100.4 | +4.5 |
衣服及び履物 | 94.8 | 103.4 | +8.6 |
食料 | 92.8 | 102.0 | +9.2 |
住居 | 100.1 | 99.7 | -0.4 |
保健医療 | 98.2 | 101.3 | +3.1 |
理美容用品 | 96.6 | 99.5 | +2.9 |
上下水道 | 96.0 | 100.8 | +4.8 |
電気 | 87.9 | 96.2 | +8.3 |
ガス | 94.3 | 90.4 | -3.9 |
通信 | 97.8 | 95.8 | -2.0 |
交通 | 93.3 | 99.3 | +6.0 |
【参考】高速道路料金 | 67.3 | 100.1 | +32.8 |
教育 | 96.3 | 102.5 | +6.2 |
自動車等関係費 | 100.5 | 99.2 | -1.3 |
【参考】軽乗用車 | 97.8 | 100.2 | +2.4 |
【参考】ガソリン | 113.2 | 96.7 | -16.5 |
教養娯楽 | 93.9 | 101.8 | +7.9 |
【参考】パソコン (デスクトップ型) | 89.4 | 101.8 | +12.4 |
【参考】パソコン(ノート型) | 93.0 | 97.8 | +4.8 |
【参考】プリンタ | 92.1 | 97.2 | +5.1 |
【参考】インターネット接続料 | 97.2 | 100.0 | +2.8 |
[ 情報源: 「2015年基準消費者物価指数 > 月報 > 月次 > 2017年5月」/ 総務省統計局 / 2017年06月30日 / http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001183723 ]
[ 情報源: 「 消費者物価指数(CPI)結果 > 全国(最新の月次結果の概要)」/ 総務省統計局 / 2017年06月30日 / http://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/index-z.htm ]
[ 情報源: 「実質賃金」/ NIPPONの数字 / 2017年07月07日 / http://www.nippon-num.com/economy/actual-income.html ]
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