私の勤務先は、主に認知症患者をケアする閉鎖病棟。
なぜ❝閉鎖❞されているのか?
患者さんの多くはADL(日常生活動作)が高めで離棟(脱走)の可能性があるからだ。
病棟で過ごされる患者さんは高齢者ばかり。
今でも時々思い出す2人の患者さんの話。
あれは、恋だったのか、それとも、情欲だったのか…。
何故か下着を履かなかったタミオさんと、入院当初の上品な印象から一変したフミさん。
タミオさんには露出した下半身を女性の患者さんに見せるという、とんでもない性癖があった。
一方のフミさんは、入院当初は夕方近くになると決まって「今日はありがとうございました。そろそろ会議の時間ですので」と、周徊が始まっていたのだが、いつの頃からかその台詞は聞かれなくなり、気づけばタミオさんが過ごす部屋に居るようになった。
ちなみにタミオさんの部屋は個室ではなく4人部屋だった。
最後に目撃した2人の姿は、いつものようにズボンを脱いで下半身を露出したタミオさんと、オムツを脱いでタミオさんのベッドで横たわっているフミさん。
何をしているんですか?
そう尋ねると、フミさんは答えた。
「おちんちんを検査していただけ」
検査って…フミさん…。
人は各々幾つもの欲を持つものだが、最後(期)に残るのは1番強い欲だと聞いたことがある。
情欲の強さを他人に惜しげもなくさらけ出す最後(期)とは、何て哀しいものだろうか、と思い出すたびため息が出るのだ。
※文中のお名前は仮名です。
アラフィフ、今日もそろりと生きてます。