私の勤務先は、主に認知症患者をケアする閉鎖病棟。

 

なぜ❝閉鎖❞されているのか?

 

患者さんの多くはADL(日常生活動作)が高めで離棟(脱走)の可能性があるからだ。

 

病棟で過ごされる患者さんは高齢者ばかり。

 

さて、ある日のタモツさんの話。

 

全く面会の無い患者さんも多い中、タモツさんには定期的に会いに来てくれるご家族がいらっしゃる。

 

面会後、病棟の出入口で家族を見送ったタモツさん。

 

そして、突然泣き出した。

 

席に案内し、そっと紙ナプキンを手渡したところ、タモツさんは話し始めた。

 

「嬉しい…けど、家族が来られない方も居るのに…申し訳ない」

 

「自分だけ、こんな(良い)思いをしていいのか…と思うけど…自分は幸せだ…申し訳ない」

 

ここまで何とか話した後、しばらく泣いておられた。

 

他の患者さんを気遣うその姿に、じーんと来た。

 

だけどね…

 

このタモツさんはセクハラ常習者なのだ。

 

先日も女性部屋に侵入し、眠っている患者さんに覆いかぶさりキスしている現場を目撃され、注意されたばかり。

 

この事実を、師長は両者(加害者・被害者)のご家族には勿論のこと上司にも報告はしていない模様。

 

毎日、午前と午後に行われるカンファレンスでも議題に挙らない、というより挙げない。

 

それは何故か?

 

カンファレンスで議題に挙がった事柄は漏れなく文字およびデータとして残る。

 

つまり証拠として残るわけだ。

 

セクハラ問題を起こす患者を受け入れる他病棟や他施設は無く、断られてしまう。

 

現在の病棟で面倒を見ればいいじゃないかって?

 

新患を受け入れるには、誰かを出さなくてはならない。

 

出すということは受け入れ先が必要なのだ。

 

他の患者さんを出せばいいじゃないかって?

 

それが出来れば、ね…。

 

患者さん毎に担当医師が居るのだが、詳細は分からないが、自分が担当する患者さんを手放したくない医師も居るというのだ。

 

あとはADLが高いといった、他病棟での受け入れ基準を満たしていない等、諸々の理由があるのだ。

 

※文中のお名前は仮名です。

 

 

アラフィフ、今日もそろりと生きてます。