「おねえちゃん、タバコ1本持ってへん?」

 

いつだったか、出掛けに突然ダミ声で尋ねられた。

 

持っていない旨を伝えると、タバコ愛を語り始めたお婆ちゃん。

 

その人が女性であることを知ったのは昨年秋のこと。

 

夜中にけたたましいサイレンと共にやって来た、救急車。

 

救急隊員の呼びかけの内容から、女性であることを知った。

 

高齢の方で時々いません?外見からも声からも性別の分からない人が。

 

ひとしきりタバコ愛を語った後、彼女は次(タバコを持っていそうな人)を探して両手に杖を持ち足を引きずりながらゆっくりと歩いて行った。

 

その日から度々タバコを求めて彷徨い歩く彼女の姿を見かけるようになった。

 

彼女の日課は毎朝玄関先に椅子を出して腰掛けること。

 

日光浴でもしていたのかな?

 

名前が分からず、「タバコ1本」と名付けた彼女の姿を最近見かけない。

 

すりガラス越しにみえる窓際に掛けられた洋服。

 

動かされた様子は全くない。

 

戻ってくる日はやって来るのだろうか。

 

 

アラフィフ、今日もそろりと生きてます。