その人は、4両目の前から1列目、左窓側の下に居た。

 

 

その日、私は新幹線「こだま」に乗車していた。

 

乗車した車両は進行方向に向かって4両目の前から2列目、右通路側の座席だった。

 

定刻通り発車した「こだま」は、ゆっくりと進み出したのだが、すぐに停車した。

 

その直前、私の乗車する車両が何かに乗り上げる感覚があった。

 

まもなくして車内アナウンスが流れた。

 

「現在、お客様を救出中です」

 

何だか腑に落ちない。

 

お客様という表現もさることながら、起きた状況が引っ掛かったのだ。

 

走り出そうしている時のことだ、スピードなんて出ていない。

 

1両目で乗り上げて4両目まで停車出来なかったとは考えられない。

 

では、なぜ4両目が乗り上げたのか。

 

そんなことを考え、救出が終わるのを待っていたのだが、自分の斜め前方下に人が居るのかと思うと、何とも言えない気分になった。

 

これはずっと後になって聞いた話なのだが、嘘か真か、浮浪者が時々ホーム下の避難スペースに潜り込んでいることがあるらしく、酔っぱらって出て来たところに接触してしまうそうだ。

 

 

アラフィフ、今日もそろりと生きてます。