私が通っていた幼稚園の遠足は、園児の保護者が同行していた。
母親だったりお祖母ちゃんだったり、覚えていないだけで、お父さんやお祖父ちゃんも居たかも知れない。
帰る時間になり、私を含む一部の園児と先生、そして一部の保護者は、近道である丘の斜面を下っていた。
私の母は他の保護者と一緒に、平坦な道が続く遠回りのルートを歩いていた。
母の「お母さんは怖くて斜面を歩けないから、一緒にあっちの道(平坦な遠回りのルート)から行こう」という誘いを頑なに断り近道を選んだのは、私自身だ。
母に「気をつけてね」と言われ、うん、と頷いた私は斜面をすり足で下り始めた。
そして地面から3メートル程の所まで進んだ時のこと、突然、私は勢いよく飛んだのだ。
理由を、はっきりと覚えている。
すり足で少しずつ下ることが面倒になったのだ。
ぴょーんと飛べば直ぐに地面に辿り着く、そう考えたのだ。
突然、と先に書いたが、どのあたりまで下ったら飛ぼうか等、幼児なりにじっくり考えた末でのことだった。
慌てて駆け寄る先生たち。
顔を上げた先に、引率の先生に呼ばれた母が、他の園児の母親たちに支えられるように走ってこちらに向かって来る姿が見えた。
いったい何が起きたのかと、強張った表情で先生に聞く、母。
「転落した」
確か、そのように先生は答えたと思う。
実際に3メートルの高さから飛んだのかは定かではないが、それくらいの高さから「転落した」と、先生は母に説明していた。
母に「落ちたの?」と聞かれ、「ううん、自分で飛んだ」と答え、その理由が❝面倒だったから❞と知った母に叱られたのは、言うまでもない。
たまに大胆な行動に出るのは、その頃からだったのだと、ブログを始めたことをきっかけに過去を振り返り、気づいた。
ちなみに、大けがはしていない。
母に「どこか痛い?足首は痛くない?」と聞かれ、「どこも痛くない」と答えたことを覚えているからだ。
着地した際に地面についた手の平が土で汚れただけだったと、記憶している。
アラフィフ、今日もそろりと生きてます。